研究課題
骨格筋は、使用しないと萎縮する。この現象は廃用性筋萎縮としてよく知られているが、廃用性筋萎縮のメカニズムはわかっていない。よって、現在のところ、廃用性筋萎縮を予防する運動や、廃用性筋萎縮からの回復を目指した効果的な運動療法は、経験則に従って行われているに過ぎない。本研究は、電気刺激による収縮からの開放による廃用性筋萎縮の培養筋細胞モデルを作製し、廃用性筋萎縮の分子機構を明らかにし、さらに、作製したモデルを発展させ、廃用性萎縮筋に対して運動刺激を行う培養モデルを確立することを目的とした。この研究の成果は、廃用性筋萎縮に対する予防や治療法開発の基盤になる。まず、電気刺激を加えた筋細胞をコントロールとし、電気刺激を停止することによって廃用性筋萎縮モデルの作製を試みた。ニワトリ胚由来の筋芽細胞を筋管細胞に分化させ、2日間電気刺激を行ったあと、電気刺激を2日間停止した。その結果、筋芽細胞の横径は、約20%細くなり、筋収縮を停止すると萎縮することがわかった。次に、このモデルにおけるタンパク質合成・分解にかかわる因子を解析した。電気刺激を加えている時期は、タンパク質合成が高まると同時に、通常の筋管細胞には見られないオートファージ―系の因子の増加が観察された。さらに、電気刺激停止早期(1時間後)では、タンパク質合成が活性化し、分解が抑制される時期があることがわかった。これらのことから、研究計画で考えていた仮説と異なり、本研究で行った電気刺激による筋収縮は、過度な負荷状態を模擬しており、電気刺激の停止による筋収縮の停止は、過負荷状態からの開放を模擬している可能性が示唆された。
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