研究実績の概要 |
我々は、脳梗塞後のリハビリ訓練中に動作を補助し、動作関連筋肉及び関節に深部感覚を誘発することによって、学習過程及びリハビリ過程の促進効果が現れると考えている。これまでに選択反応時間タスクの逆転学習を片側前肢感覚運動野脳梗塞ラットに行わせたところ脳損傷部位対側前肢に関する学習機能が低下していることが分かってきている。本研究では、同様の実験条件下で、強制的に応答動作を誘発することによって本タスクの学習過程が促進されることを実証する。その際、強制的に応答動作を誘発させる前肢の側及びタイミングの影響を統計解析し、学習やリハビリ過程を効果的に促進しうる動作補助条件を明らかにする。 平成28 年度は、応答動作のタイミングにあわせた正反応側あるいは誤反応側レバー駆動の効果を検証するため、左右前肢のレバー押力の比率を閾値処理することで応答動作のタイミングを予測できるように改良した。その予測結果に同期させてタスクのキューである刺激時刻とレバー応答の時刻のヒストグラムを作成したところ、レバー応答タイミングの20ミリ秒前の時刻を予測する場合であれば「予測された時刻がタスクのキューに追随するものというよりもレバー応答に先行するもの」と考えられた。このことを利用すれば、応答動作誘発のためのアクチュエータの駆動遅れ時間が20ミリ秒程度であるため、応答時刻付近で応答動作を誘発できるようになる。この技術を用いて片側前肢感覚運動野脳損傷ラットに対して本タスクの学習実験を行った。その結果、異なるタイミング(刺激時刻の一定時間後あるいは応答時刻付近)で応答動作(正応答あるいは誤応答)を誘発した場合、誤反応側レバーを駆動することにより、学習に要する日数が少なめである可能性が示唆された(Mann-Whitney U test, p < 0.1)。今後さらに詳細なデータ解析とデータの追加収集を実施する。
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