研究課題/領域番号 |
26350650
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
二見 亮弘 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (20156938)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 皮膚電気刺激 / ブロッキング / 高周波電流 / 運動神経 / 指伸筋群 |
研究実績の概要 |
本研究は,間欠的な皮膚電気刺激パルス列中の個々の主刺激パルスの直前に高周波バースト波形を挿入して,神経ブロックを利用した選択的神経刺激法の開発を目指すものである。しかしこの方法による神経ブロックは有効ではないことと,超低周波刺激の重畳にはブロック効果があるものの主刺激パルスの周波数をブロック刺激の超低周波以上に上げらず実用的な筋収縮力を得られないことが,前年度の研究において分かった。 よって今年度は,通常の刺激パルス列に高周波の連続波を重畳する方法の検討に切り替えた。まず予備的実験において,基準電極を共有する計3枚または4枚の電極により二対の刺激を皮下で空間的に重畳させる手法をとったが,再現性あるブロック効果は得られなかった。次に,二つの刺激波形を加算合成し,2枚一対の電極での刺激を試みた。その結果以下のようなブロック効果および深層の運動神経への選択的刺激と思われる効果が確認された。 刺激位置は前腕外側皮膚上,主刺激はバースト幅を2ms,バースト内方形波周波数を500Hz,バースト繰り返し周期を20msとし,刺激強度は手掌背屈が確認でき,かつ痛みが生じない範囲内とした。高周波ブロック刺激は20kHzの正弦波で最大刺激強度を46mAp-pとし,周期5秒の正弦関数で振幅を増減させた。それぞれの刺激の最大振幅は被験者が調整し,痛みや発熱が感じられない範囲内とした。この実験では,高周波ブロック刺激の振幅の増大に同期して手首の背屈角度が減少する場合(電極貼付位置と主刺激振幅に依存)があることが確認された。 次に,2枚一対の電極を総指伸筋・小指伸筋,短母指伸筋上の皮膚に配置して同様な実験を行ったところ,被験者4名中3名において,浅部にある総指伸筋・小指伸筋への刺激が高周波ブロックされ,深部に神経筋接合部がある短母指伸筋のみが主刺激の効果で収縮したと推測される選択的刺激効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度に実施予定であったブロック用刺激と興奮用刺激を異なる電極対で印加する方法の開発については,種々の配置による二対の電極でブロック刺激の効果を探索したが有効な配置を見出すことはできなかった。これについては二対の電極のサイズを変えるなどして実効的な刺激深度を主刺激とブロック刺激で変化させる試みであったが,さらなる試行が必要であると考えられる。 一方,当初の計画にはなかったが2枚一対の電極を使ってブロック用刺激と興奮用刺激の加算波形を印加する方法では新しい知見を見出すことができた。この意味では期待される成果が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた成果に基づき,以下の各項目についての実験やシミュレーションを行い,研究成果をまとめて公表する。 (1) 2枚一対の電極を使ったブロック刺激の効果をさらに詳しく探索する。 (2) 連続高周波によるブロック刺激とバースト波による低周波主刺激を重畳した刺激を用いる場合の軸索の電気的振舞いを生体興奮膜のコンパートメントモデルを用いて数値シミュレーションし,実験で見られた刺激効果の周波数依存性や振幅依存性などと比較し,モデルによる解釈が可能かどうか,さらにはどのようなモデルの修正が必要かを調べる。 (3) 必要以上に長時間の刺激を行うと,連続高周波電流による電極下の発熱が知覚される場合があるため,ブロック刺激の周波数や電極パラメータを変更して,より小さな振幅でもブロック刺激の効果が得られる条件を明らかにする。
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