研究課題/領域番号 |
26350660
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山本 智規 愛媛大学, 理工学研究科, 講師 (30380257)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 変形性膝関節症 / 装具 / 曲線シリンダ |
研究実績の概要 |
本研究は,加齢により生じる代表的な関節疾患である変形性膝関節症の痛みを低減するための関節サポーターの開発を目的とする.人間の膝関節は,屈曲・伸展に同期した内旋・外旋運動を行うという,複雑な動きをすることが知られている.本研究では,健常な人間の膝関節の動きを解析し,得られた解析結果から,自然な膝の動きをサポートする膝関節サポーターの開発を行うことを目指している. 平成26年度は,まず健常者の膝関節動作の解析を行った.健常な人間の膝関節が,どのような特徴を持つ動作をしているのかを明らかにするために,膝関節の動作計測実験を行った.計測には,3次元リアルタイムモーション計測システムVENUS3D(ノビテック社)を使用した.被験者の膝関節周辺(大腿部および下腿部)に軽量の反射マーカーを取り付け,起立状態で膝関節の屈曲/伸展動作を行ってもらった.このときのマーカーの動きを3次元リアルタイムモーション計測システムで計測し,得られた結果を基に大腿部に対する下腿部の相対角度を算出した.被験者は,健常な大学生男子10名で,屈曲/伸展動作を10回行ってもらった.算出された相対角度のデータの平均値から,膝の伸展に伴う下腿部の外転(やや外側に下腿部が膨らむ動作)や終末強制回旋運動(SHM,下腿部が大腿部に対し軽く外旋(外向きに回転)すること)が確認された. 次に,得られた膝関節の特徴を再現する装具(サポーター)の概念を提案した.足の内側及び外側に,それぞれ異なる曲率の曲線で構成されたシリンダを配置し,膝の屈曲/伸展にあわせて動作する機構を提案した.これにより,自然な膝運動で行われる,外転およびSHMを行うことが可能となった.提案した機構について,特許の出願を行った(特願2014-207037「関節装具」).
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究において,膝関節の可動範囲を全部カバーするため,起立時の屈曲/伸展動作の計測を行った.その結果,膝関節運動で見られる,外旋運動と終末強制回旋運動を計測できた.また,計測した結果得られた平均値をもとに,膝関節運動の特徴を明らかにした. さらに,これらの特徴を表現できるような,曲線シリンダを用いた膝関節装具の概念を提案し,特許出願を行った(特願2014-207037「関節装具」). 計測実験に関して,自然な歩行時,および椅子等を使用する際の膝関節運動の計測については,十分な精度での計測が完了していないが,計測器の配置等を検討し,再度計測実験を行う予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究では,まず,自然な歩行時,および椅子等を使用する際の膝関節運動の計測を行う予定である.平成26年度の計測実験時にこれらの計測を行ったところ,十分な精度での計測ができなかった.このため,本年度は,計測器の配置を,十分な精度が得られるよう検討し,再度計測実験を行う.場合によっては,新たに計測用カメラを追加することで精度を確保できるか検討する. 平成26年度の計測結果,および本年度の計測結果から,健常な人間の膝関節運動のモデル化を行う.具体的には,膝運動を,歩行時と椅子等の利用時,無負荷時などで単一のモデルを用いて表現できるのか,または複数のモデルを用意すべきなのかを検討していく. また,本年度は,平成26年度に提案した関節装具の曲線シリンダについて,得られたモデルを基にした設計アルゴリズムを構築する.これにより,計測結果から被験者に合った関節装具を設計する手法を確立したい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品として,3次元リアルタイムモーションセンサ計測システム一式を購入したが,価格が申請時の見込みより若干超過しており,旅費等で計上していた分を回し購入したため,端数が出てしまった.
|
次年度使用額の使用計画 |
計測方法等を検討し,場合によっては,3次元リアルタイムモーションセンサ計測システムの構成部品である計測用カメラを追加で購入する可能性がある.
|