研究課題/領域番号 |
26350669
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研究機関 | 富士大学 |
研究代表者 |
金子 賢一 富士大学, 経済・経営システム研究科, 教授 (50337177)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ペダリング / トレーニング効果 / 表面筋電図 |
研究実績の概要 |
近年,寝たきりを未然に防ごうとする視点から,高齢者や超高齢者における能動的な運動トレーニングの必要性が叫ばれるようになった.高齢者における筋のトレーニング効果に関しては,相当数の研究が1980年代以降に行われ,高齢者や超高齢者でも高強度のレジスタンストレーニングを行うことで筋力が向上することが確認されている.本学が立地する岩手県は積雪寒冷地に属し,冬期には転倒事故が地域特有のバリアとして続発する.そのため,屋外で気軽に運動トレーニングを行うことが困難な環境である.そこで,本研究では冬期においても屋内で運動することが出来るエルゴメータを用いたペダリング運動に着目し,ぺダリング運動のトレーニング効果を表面筋電図を指標として評価できないか検討した. ペダリング運動トレーニングは,1回15分を週2回,1カ月間行った.ペダリング運動トレーニング前とトレーニング後(1か月後)の下肢筋群の表面筋電図信号を測定し,筋電図評価尺度であるRMS値を算出し比較を行った.被験者は,ペダリング運動に習熟していない一般の学生(非サイクリスト)と,自転車競技部に所属している学生(サイクリスト)及び,日ごろから自転車を利用しない高齢者とした. その結果,関節自由度が低い単純な運動であるペダリング運動に関しては,運動の習熟過程の初期段階では主に前脛骨筋と腓腹筋の筋活動量が増加し,一方,ペダリング運動に十分に慣れているサイクリストでは,筋活動量を減じることによりペダリング運動の習熟度を上げている様態が分かった.高齢者においても,大腿直筋と前脛骨筋でRMS値の増加が認められた.ペダリング運動のトレーニング効果を評価する場合,その習熟度合いにより評価方法を変える必要があることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ペダリング運動の実験において,実験に協力的な高齢者,サイクリスト,学生被験者を得ることができた.分析においては,前年度までの事前準備が功を奏し,基本的な分析を全て行うことが出来た. さらに,本研究をグローバルに発展させるため,来年度より米国のピッツバーグ大学School of Health & Rehabilitation ScienceのDr.Rory A.Cooperと共同研究を行う道筋をつけた.
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今後の研究の推進方策 |
第二段階として,これまで行ったペダリングに関する実験データを用い,筋シナジーを抽出する.ペダリング運動に習熟すると筋シナジーが構築され,抽出した筋シナジーに対して寄与率の高い単一筋群のEMG信号にウェーブレット解析を施すことで,周波数領域の情報を指標にトレーニング効果を評価出来るものと予想している.筋シナジーとH反射の協関度に着目することで,個人差の少ないトレーニング評価尺度を見出すことが今後の研究目標である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新規に購入予定のH反射誘発装置は次年度に購入することにし,初年度は既存の実験装置で可能な実験のみを行ったため.被験者の獲得が思いのほかスムーズに行えたため,より多くの標本を集めた統計解析を施すべく,可能な限り基礎実験を行い,得られたデータの検証に時間を費やしたため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は今年度の未使用分である300,000円を加える形で,刺激装置と分析装置が一体になった機器を購入し,より効率的に次の段階の実験およびデータ処理を行いたいと思っている. さらに,本研究をグローバルに進展させるため,米国のピッツバーグ大学と共同研究を行うことになったので海外への出張旅費を拡充して使用したいと計画している.
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