研究課題/領域番号 |
26350670
|
研究機関 | 東北文化学園大学 |
研究代表者 |
坂本 保夫 東北文化学園大学, 健康社会システム研究科, 教授 (60410304)
|
研究分担者 |
中山 奈々美 東北文化学園大学, 医療福祉学部, 講師 (00616641) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 健康・福祉工学 / 遮光眼鏡 / トンネル照明 / コントラスト感度 / グレア / 羞明 / ナトリウムランプ |
研究実績の概要 |
遮光眼鏡は眩しさを軽減するための医療用サングラスで、通常の眼鏡としてもその有用性は認められている。ただ防眩には濃色レンズが使用されており、使用環境の制限で有効利用されていない。そこで我々は可視光線の狭帯域吸収(主に黄色光吸収)を利用して透明に近い遮光眼鏡の研究に着手し、防眩への有効性を確認してきたが、この黄色光吸収はトンネル照明に多用されているナトリウム(Na)ランプの発光波長に近似しており、トンネル内での視認性の低下が懸念された。本研究では、黄色光吸収遮光眼鏡の日常安全使用のために、トンネル照明下での視認性について検討している。 まず予備実験(H26-27年度)として、低圧Naランプ照明下でこの遮光フィルターを装用した場合、視認性としてコントラスト視力の変化を検討した。低圧Naランプ照明のみの暗所では、夜間運転適合したフィルターでも、黄色光吸収により視感度の低下が示唆された。次いで本実験では、対向車・自車のヘッドライト(高輝度白色LED)によるグレア負荷への検討を行うため、予備実験と並行して測定環境をトンネル照明に近似させたコントラスト・グレアテスターの改造を行った。 本年度(H28年度)は、防眩の有効性が期待される中高年層への本実験に進んだ。対象は普通自動車免許取得において適正視力であった成人ボランティア計34名に同意が得られた。なお40歳以上の中高年では30名(平均56.3歳)であった。現段階での簡易解析(総数)では、明所とトンネル照明下(暗所)における遮光フィルター有無でコントラスト感度に有意差は認められていないが、対向車のグレア負荷(トンネル照明)においては、遮光フィルター装用による視認性の低下が疑われた。今後、総合的なデータ集計・解析を行う。次年度(最終年度)において中間報告として、第56回日本白内障学会総会に発表予定を考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初(H26・27年度)の予備実験では、検査機器の納品が遅れ、進展状態が若干遅れぎみとなったが、H27年度の継続予備実験にて目標対象数(30名)に達し、低圧Naランプのみによるトンネル照明下(暗所)では、遮光(黄色光吸収)フィルターによる視認性の低下が示唆されている。なおH27年度には予備実験と並行して、測定環境をトンネル照明に近似させたコントラスト・グレアテスター(タカギセイコー、CGT-2000)のトンネル照明改造を行い、年度末に完了した。この時点で、おおむね順調に研究計画が進展し始めた。この予備実験の結果より、トンネル照明下でのグレア負荷(対向車・自車のヘッドランプ)環境での、遮光フィルターの視認性について、本年度(H28)には本実験に進んだ。 本実験では、防眩有効性が期待される中高年層を目標(30名)とし、対象は普通自動車免許取得において適正視力であった成人ボランティア計34名に同意が得られた。なお40歳以上の中高年では30名(平均56.3歳)であった。次年度は総合的なデータの集計・解析に入いり、中間報告として学会発表を予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度(平成29年度)は、特殊トンネル照明付きコントラスト・グレアテスターを用いて、視認性検査を行った本実験のデータを総合的に集計・解析し、中間報告として学会発表(第56回日本白内障学会総会/宇都宮市)を予定している。最終的には実績報告書にまとめて提出する。 なお、本実験(低圧Naランプ照明下における黄色光吸収フィルターの視認性)のまとめとして、トンネル照明の変遷でランプ色(発光波長)の現状を調査(サンプリング)し、今後の視環境の変化に伴う透明遮光眼鏡の視認性、安全のための使用法などを考察する。近年、照明コストや使用電力の節減などを目的としてLED照明が利用拡大しており、トンネル照明にも設置されているランプの種類は、低圧Naランプ(黄色)から高圧Naランプ(高輝度橙色)⇒Hf蛍光灯(白色)⇒LEDランプ(白色)などに変化しつつある。透明遮光眼鏡の作成および使用方法も考慮しなければ安全性に関わる。本研究でのサンプリングは、各種のトンネル照明ランプが使用され、さらに対面通行があり、各トンネルの視環境状態が異なっていると予想される磐越自動車道路(東北横断自動車道いわき新潟線西側:郡山⇔新潟間、距離:約140 km、トンネル数:20本、対面通行あり、最長:龍ヶ嶽トンネル3,660 m)を予定している。測定には分光放射照度計(スペクトロナビMK-350 Advanced, UPRtek)を2台用意し、1台は通常の視環境の分光照度、他方には平板の狭帯域吸収フィルター(黄色吸収、夜間運転適合:視感透過率75.7%)を装着して、装用時の分光照度を同時に測定する。これにより視環境の異なる透明遮光眼鏡の視認性を考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
最終年度では、本研究の最終まとめとして、トンネル照明の変遷からランプ色の現状を調査(サンプリング)するため、測定器として分光放射照度計(スペクトロナビMK-350 Advanced, UPRtek)が2台必要となった。1台は通常の視環境の分光照度、他方には平板の狭帯域吸収フィルターを装着して、装用時の分光照度を同時に測定する。これにより視環境の異なる状態での透明遮光眼鏡の視認性を考察するためである。1台は本実験用として本年度購入している。来年度にもう1台を購入する予定であるが、来年度の交付金では購入費が若干不足となるため、本年度の交付金より、購入費の不足分を来年度に移動させる必要があった。それゆえ、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と来年度の助成金は、主に分光放射照度計の本体と記憶媒体などの購入費に用いる予定である。
|