研究課題
平成28年度は、濃厚栄養剤と非加熱型凝固剤を組み合わせて半固形化栄養剤を調製し、前年度末に科研費にて導入した「スプレードライヤー(噴霧乾燥)システム」を用い栄養剤が凝固(ゲル化)する途中で脱水して化学反応を停止した。その後、乾燥体中に残存する水分量を水分計により把握し、さらに脱水量に相当する水を添加して復水し、脱水前と復水後の半固形化栄養剤の粘度を振動式粘度計やE型粘度計(いずれも現有設備)にて測定した。まず、調製した半固形化栄養剤の理論含水率は栄養材と凝固剤との組み合わせにもよるが80~83%であり、真空凍結乾燥後の残留水分率は1~3%であった。一方、噴霧乾燥後の残留水分率は栄養材と凝固剤との組み合わせや粉体の回収場所にもよるが4~6%であった。つづいて、噴霧乾燥システムを利用して乾燥した半固形化栄養剤の復水状況を調査した。ここでは濃厚栄養剤にCZ-Hi、非加熱型凝固剤にリフラノンを用いた結果を示す。混合して1時間経過後より約60分かけて噴霧乾燥を行った。乾燥後の試料に乾燥前と同等な水分量となるように水を加え、復水経過時間とE型粘度(ずり速度50/sにおける平均値)との関係を調査した。脱水して復水1時間後は203mPa・s,復水2時間後は234mPa・sであり、Control(脱水無し、調製2時間後)の粘度573mPa・sまでは復元しなかった。この理由は、凝固剤添加時から凝固剤と栄養剤の3次元網目ネットワーク(イオン架橋)の形成が始まり、この網目内にトラップされた水が強制的に脱水された後、再び水を加えても元の3次元網目内に水は戻りきらず半固形体と液体が共存、すなわち「離水」が生じ、粘度測定結果も液体の性質を捉え「低粘度」となったと考えた。以上の結果、離水が生じる要因は凝固剤と栄養剤との反応により3次元網目ネットワークが形成されることによると結論づけた。
11.研究発表〔雑誌論文〕に関して、論文表題は本研究課題と異なるが、物性評価方法ならびに考察に本研究課題に関連する事象を適用している。
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Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan
巻: 23 ページ: 225-230