屋内店舗空間を歩行中の重度視覚障害ユーザに対して、周囲のランドマークとなる設備、障害物ならびに陳列されている商品の実在する位置に立体音響を用いて仮想音源を生成し、完全開放型イヤスピーカを介して設備名称や説明を「そのものの位置から」音声・音響提示するインタフェースを構築するインタフェースを開発した。また、周囲に手をかざすなどのジェスチャ認識をトリガとして、あたかも手で音に触れるかのように立体仮想音源の表示ON/OFFを視覚障害者ユーザが自在に制御できる、選択的聴取が可能な聴覚ユーザインタフェースを開発した。これにより、視覚障害があっても聴覚的に周囲を「見渡す」ことを可能とし、能動的に情報獲得できるようにすることで、これまで困難であったユーザの周囲環境の理解を大幅に促進させるインタフェース開発に成功した。初年度は立体音響システム試作・人間特性検討として、任意に音源を能動的に選択して吹鳴・停止可能な立体音響システムを開発した。2年目はジェスチャインタフェースプロトタイプ実装・評価として、(1)ジェスチャ認識方式および設置位置の検討、(2)ジェスチャパタンの体系化等を行った。その結果、データグローブ型の入力デバイスを用いることが評価用テストベッドとしては望ましいことが分かった。ジェスチャパタンは先ずは基本的な機能として音源選択機能のみを対象として当事者ユーザと検討を行い、決定した。また、実際の店舗空間における調査の結果、当事者ユーザの意見を通じて、実際の店舗を想定した設計案を作成することができた。これを元にインタフェースの詳細設計を行った。3年目にはシステムの統合実装を行い、総合的な提案インタフェースのユーザビリティ実証評価を行った。その結果、本システムの有効性の一端が確認できたため、課題はいくつか残るものの、基本的なコンセプトは満たすことができたと結論付けられた。
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