義足用の足部は様々な種類(構造)のものが生産されている。これまで、その力学的な特性が議論されるよりは、使用者の主観的な感覚が言葉で報告されてきたが、どのように感じているのか、客観的なデータによって報告されることは少なかった。 国際標準化機構において、義足足部の機械的特性を調べるための試験機とその試験方法が検討されるようになったことから、異なる足部に対しても、統一的な方法で機械的な特性を求めることができるようになった。また、義足使用者がどのように感じているかについては、言葉による主観評価に加えて、光トポグラフィによる脳表面の血流量変化や呼吸代謝計測による使用エネルギー量の評価など、客観的なデータを使用することができるようになった。 そこで、下腿切断者及び健常者が下腿模擬義足を使用する状況において、使用する足部を交換して、主観評価と客観評価を求め、それと、試験機による機械的特性との対応を見ることを目的とした。義足足部の特性を見るための試験機を完成させて数種類の義足足部の特性を得た。また、下腿切断者で下腿義足使用者に数種類の足部を交換して、トレッドミルを用いて、平地歩行、坂道の下り、坂道の上りなどを歩行させ、その時の脳表面の血流量の変化を見るために光トポグラフィでの計測、使用したエネルギーを比較するために、呼吸代謝を計測した。被験者としては、初年度に2名の模擬義足を使用する健常者に、第2年度に3名の下腿切断者、第3年度に2名の模擬義足を使用する健常者に歩行をさせて、主観的な評価と客観的なデータとの対応を見た。 義足足部には同じ構造の製品であっても使用者の体重に合わせた硬さのカテゴリーがあり、これによっても感覚が異なることが分かったことから、最終年度には、1種類の足部について、模擬義足による健常者歩行で硬い足部と柔らかい足部について主観評価とエネルギー消費を比較した。
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