21世紀ビジョンにおいて、世代間交流の必要性が強調されて以降、世代間交流の取り組みが盛んに行われるようになってきている。しかし通所施設における世代間交流の試みや精神障害者を対象とした研究は少ない。そこで本研究では、「介護予防を目的とした高齢者」と「就労を目的とした青年者」との双方の世代間交流について検討し、さらに世代間交流における「役割の獲得」と「認知症予防」との関係についても経時的な変化から効果を検討することを目的とした。 対象は精神科デイケア利用者とし、そのうち「世代間交流群」を土曜日利用者40名、「非世代間交流群」を金曜日利用者50名と設定した。世代間交流については、意図的に世代間交流を図るため、高齢者と青年者が協同して実施するグループを4チームつくり、1ヶ月に1回毎の定期的な頻度で「サタデーカップ」と命名した風船バレーボール大会を実施した。この大会は1年間の通算成績を掲示しながら、継続した世代間交流を図る目的で実施した。大会開始後1年毎の順位を決定し、1年間でチーム編成を再構成した上で、3年間実施した。また、「非世代間交流群」については、高齢者のみのプログラムを実施しており、世代間交流には参加していない。 「世代間交流群」のべ52名と「非世代間交流群」55名の経時的変化について集計した結果、両群共に有意な機能の低下は認められなかった。これは、精神科デイケアでは身体・精神機能が低下し、要介護状態になると通所が中断するためと考えられた。そこで、地域の健常高齢者を対象に、身体機能面と認知機能面の評価も実施しており、一般高齢者との比較においても著明な変化は認められなかった。3年間という限定した期間であったため、今後継続したデータ収集を行い、役割の獲得と認知症予防および介護予防の関係について検討していく。
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