研究課題/領域番号 |
26350687
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
佐藤 拓 仙台高等専門学校, 電気システム工学科, 准教授 (30451545)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心臓ペースメーカ / ワイヤレス給電 / 充電状況 / 渦電流損 |
研究実績の概要 |
若手研究(B)課題番号「24700602」で提案した「心臓ペースメーカのワイヤレス充電時における外部からの充電状況推定システム」をブラッシュアップし,実用化に向けた実践的検証を進める研究である.体内に埋め込まれたペースメーカの充電状況をワイヤレス充電時に体外から計測するシステムの構築を目指し,充電状況に対応してインピーダンスが変化する事に着目し,その変化を外部から推定するものである. 1.H26年度のワイヤレス給電時の金属に生じる渦電流損に相当する直列等価抵抗を考慮した提案式による充電状況推定において,H27年度はチタン以外の金属においても1次側パラメータから電池残量に応じて変化する2次側インピーダンスを計測できることを検証し,その計測可能条件(伝送電力,送受電コイルの結合係数)を見出した.また,金属ケースの有無の条件下によるワイヤレス給電のデータ解析から,提案する直列等価抵抗が渦電流損の損失分を十分に表現できていることを確認した. 2.H26年度の矩形波ワイヤレス給電の実験的検証成果を踏まえて,H27年度は2次側インピーダンス計測機能(充電状況推定機能)を搭載した矩形波交流ワイヤレス給電の充電器を設計・製作し,矩形波伝送における充電状況の推定が可能であることを検証した. 今後は,duty可変の矩形波生成回路および,ワイヤレス給電時の2次側充電電流,2次側受電電圧を計測するための推定式を提案し,発熱評価などを含めたトータルシステムの検証実験を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ワイヤレス充電時に金属ケースに渦電流が生じることによる2次側インピーダンスの計測誤差を補正するために直列等価抵抗を導入する手法を提案し,その妥当性を検証した.金属ケースに生じる渦電損を表す1次側換算の直列等価抵抗の導出方法は,ワイヤレス電力伝送時に計測可能な1次側投入電力P1から1次銅損PR1,2次銅損PR2,2次側受電電力P2を差し引いた損失電力P0を金属ケースによる電力損失分と見なし,その損失分を表す直列等価抵抗R0を決定する.1次側換算の直列等価抵抗が渦電流に起因する電力損失を表現できているかを金属ケース有無の2つの条件下で,ワイヤレス給電時の伝送周波数fおよび1次電流i(すなわち磁束密度B)を変化させて損失電力P0の挙動を調査した.その結果,金属ケース無しではP0はfによらず一定,iの2乗に比例し,その値は小さいものであった.これは共振コンデンサの直列抵抗分による銅損が見えたものと考えられる.続いて金属ケース有りでは,P0はfの2乗およびiの2乗に概ね比例して変化し,その変化量は金属無し時と比べて大きいものであった.fの2乗で変化するのはまさしく渦電流損特有の挙動である.ゆえにP0は金属に生じる渦電流損であり,これを基に算出される直列等価抵抗による補正が妥当であると言える. 2.H26年度の矩形波ワイヤレス給電の実績を踏まえて,2次側インピーダンス計測機能(充電状況推定機能)を搭載した矩形波交流ワイヤレス給電の充電器を試作した.矩形波生成および制御はPICで行った.ボルテージフォロア回路で接続負荷との駆動回路分離を行い,差動増幅,反転増幅,プッシュプル電流増幅回路で電圧と電流を増幅し,5Vpp,最大出力1Wの出力を得た.充電状況推定のための電力データ(1次側有効電力,力率)の計測には3電圧計法を用いた.シャント抵抗値の最適化などにより,計測誤差4%未満で実用上問題ないレベルを達成した.
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今後の研究の推進方策 |
1.2次側電圧・2次側電流・2次側電力の推定:ワイヤレス充電時に1次側パラメータの変化から2次側電圧や2次側電流を計測(推定)するシステムを構築する.これまでの2次側インピーダンス推定による充電状況推定システムでは受電電圧一定が計測の条件であったが,電圧変動時にも充電状況を推定可能で高度な充電制御を行える信頼性の高いシステム開発を目指す. 2.位置ずれ(結合係数)の推定:ワイヤレス充電時に位置ずれを検知し,推定値を補正するシステムを構築する.これまで提案している推定式には,コイル間の位置ずれで変化するパラメータ(相互インダクタンスM または結合係数k)を含み,位置ずれで推定の誤差が生じる.そこで,位置ずれを1次側から推定し,補正できないかの検討を進める.本システムを実現できれば,位置ずれ警告や位置ずれによる推定値補正,送電出力の自動制御ができるようになり,更なる信頼性向上および汎用性が期待できる. 3.携帯型充電器の試作・評価(継続):以上の検討を踏まえて,矩形波のduty比を変化させて送電電力制御を行うインテリジェンス充電制御システムの構築を目指す. 4.発熱評価:進捗状況により,2次側充電回路を外注し,充電時の発熱評価を行う.なお,温度評価環境(ファイバ温度計,恒温槽)はH27年度までに構築済みである.
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次年度使用額が生じた理由 |
回路外注およびチタンケースの製作を保留にしたため.
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次年度使用額の使用計画 |
回路外注およびチタンケースの製作費に充てる.
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