研究課題/領域番号 |
26350689
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研究機関 | 群馬工業高等専門学校 |
研究代表者 |
大墳 聡 群馬工業高等専門学校, 電子情報工学科, 准教授 (50223863)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 福祉 / 触覚 / 皮膚刺激 / 体表点字 |
研究実績の概要 |
視覚と聴覚に障害のある盲ろう者を主な対象として振動で情報を伝える体表点字の研究を行っている。応用面での有用性は示せているが体表点字の読み取り速度は速いとは言いがたい。本研究では、体表に対する振動方向による認識の違いを明らかにするとともに、振動にとらわれず触覚刺激として認識のよい刺激素子を見出し、手指以外の体表での認識しやすい刺激方法を解明し、体表点字での認識の向上を図ることを目的とする。本研究の特色は触覚感覚器の少ない体表部位での位置弁別を扱うものである。 これまでの体表点字の振動刺激呈示素子には振動モータを用いていた。振動モータを用いていた理由は単に入手しやすくかつ制御しやすいものであったからである。昨年度から振動スピーカを用いた振動刺激素子も検討した。しかし、振動スピーカでも、体表上に置き皮膚に垂直方向に刺激を与えることになる。 今年度は、皮膚に対して水平方向に刺激を与える素子とそれを制御する駆動装置により体表点字の認識について検討した。水平方向に刺激を与える素子として、研究計画調書にて提案した形状記憶合金の一種であるバイオメタルファイバー(トキ・コーポレーションBMF100)を用いた。BMF100は、直径:0.1mm,実用運動ひずみ率:4%であり、パルス的な電圧を印加することにより、線が伸び縮みして振動刺激が得られるというものである。線の長さを10cmまたは15cmとし、指に巻く・折りたたんで貼り付ける・指から垂らすという設置方法で、どの方法でも皮膚に対して水平方向の刺激を呈示できるものであった。 体表点字の読み取り実験を行った結果、正答率は50~60%程度であり、体表点字の刺激素子としては利用できないことが判明した。正答率が低い理由は、想像以上に刺激が弱かったためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで垂直および水平方向の全方向の振動刺激であったものを、今年度は水平方向の刺激として直線状に伸び縮みするものを検討した。水平方向に刺激を与える刺激素子として形状記憶合金を検討したが、刺激が弱すぎて失敗に終わった。交付申請書の時点では水平方向に刺激を与える刺激素子として偏心おもりによる刺激呈示素子も提案していたが、偏心おもりによる刺激呈示素子は左右の偏心おもりの同期をとるのが難しく(同期ずれが蓄積してしまう)装置化は困難である。 皮膚に対して水平方向の直線状の刺激を想定していたが、装置化を考えると水平方向で円状に刺激を与えるという考えに至った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、従来の体表に対して垂直方向の刺激ではなく、水平方向の刺激により体表点字の認識が変わるかどうかを見出すことであった。水平方向の刺激としてモータの先端に付けた円盤状のものを皮膚にあてることで円状の刺激を与えられることに思い至った。今年度は円盤状のものを皮膚にあてやすいように装置化して、水平方向の刺激による体表点字の認識を測定し、水平方向の刺激の有用性を確認する。そして、これまで刺激呈示方法を比較検討して、体表点字の適した刺激方法を見出すとともにその理由を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度に新たな装置の作成が必要となり、次年度使用額を作成費の一部とする。
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次年度使用額の使用計画 |
円状刺激を与える装置の作成が必要になるが、モータおよびモータ駆動回路については、今年度中に刺激が発生できるか確認のため購入済みである。体表に設置するための装置化が必要であるが、今年度未使用額の27,808円と当初平成28年度分の配分額のうちの電子部品として計上していた金額60.000円で可能である。 それ以外の28年度分の配分額については、当初予定通り、装置による実験のための、実験旅費、打ち合わせの旅費、学会発表の旅費等にあて、平成28年度の研究を進めていく。
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