点字を指先に装着したセンサでなぞるだけで日本語音声として読み上げるウェアラブルデバイスの開発を目標に研究を進めてきた。これを実現するためH26年度からの3年間で、(1)Lucas-Kanade法によるセンサレス移動量検出、(2)点字画像からの点影のみの抽出、(3)ラベリングと重心計算による点の代表座標抽出、(4)統計的手法による点字1文字ごとの切り出し、(5)高精度点訳エンジン、を新規に開発した。 (1)は指先に装着したセンサの移動量を検出するために特別なセンサなどを必要とせず、入力される圧力データの変化から移動量を検出することができるアルゴリズムである。指先に装着すべきセンサ数を削減でき、装着感・耐久性を向上させることができる。(2)は紙面に墨字が重ね打ちされた点字を入力画像とした場合でも墨字を自動消去して点影のみを抽出するアルゴリズムである。感圧センサ以外の光学画像入力を用いる場合に特に有用となる。(3)は点影の連続する固まりを同一グループとみなすことによって、点影が歪んだ形であっても手順の後段で安定した処理を行うためのアルゴリズムである。従来提案していた顔認識による点影認識よりも精度が飛躍的に向上した。(4)は(3)により計算された座標を元に点の集まりを点字1文字として切り出すアルゴリズムである。点字の突起以外はセンサデータとしては無信号となるため、空列が続く場合などの処理が大変困難であったが、本研究では統計的手法を用いて空列が複数続く場合でも点字1文字を正確にグループ化できる。(5)は点字の文法に沿って点字の並びを日本語テキストに翻訳するエンジンであり、情報処理点字などいくつかの例外を除けば日常生活に使われる点字をほぼ正確に日本語テキストに変換することができるものを開発した。 感圧センサを接続しての実装は未完成であるが構成要素は実施期間内にほぼ完成させることができた。
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