研究課題/領域番号 |
26350696
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
曽根 涼子 山口大学, 教育学部, 教授 (50271078)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 運動後低血圧 / 暑熱 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究目的は、運動後に血圧が一時的に低下する現象である運動後低血圧とその発生機序、および運動後の脳酸素化動態に及ぼす高温環境の影響を検討することであった。健康な男子学生10名を被検者として、まず、多段階漸増負荷法によって最大下運動負荷検査を行い、その結果得られた運動強度と心拍数の関係に基づいて心拍予備の60%の強度を求めた。次に、中立温あるいは高温条件において、ベースライン測定の後に、60%強度で40分間の自転車運動を行わせるか、あるいはその対照として椅坐位安静を保たせ、引き続き、運動あるいは安静後の測定を1.5時間行った。実験時の環境温度は、中立温条件では常に26℃とし、高温条件では運動あるいは安静終了までは26℃、それ以後は32℃とした。各実験において、測定は、ベースライン、および運動あるいは安静後20、50および80分の各時点から、半仰臥位で行った。測定項目は、血圧、前頭前野の酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビンおよび総ヘモグロビンの濃度、心拍出量、末梢血管抵抗等であった。本研究の結果から、健康な若年男性において、中程度の強度での全身持久性運動後の血圧調節は環境温度の影響を受けて変化し、高温環境下では、体温調節と関係した皮膚血管拡張による末梢血管抵抗低下作用の影響によって、血圧はより顕著に低下する傾向があることが示唆された。運動後に高温環境で1~1.5時間過ごした場合、平均血圧は対照条件(中立温)に比べて平均5~6 mmHg低下した。また、環境温度に関係なく、運動後の脳酸素化動態に、脳血流量の減少を示唆するような変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた実験を実施し、本年度に検討を予定していた事項については、検討を終えられたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27・28年度には、高温環境における運動後低血圧現象について、心的状態および計算能力との関係、および弾性ストッキング着用の影響等について検討する。 被検者:定期的に運動を行っていない健康な若年男性10名とする。 手順:ベースライン測定後に、心拍予備の60%の強度で40分間の自転車運動を行わせ、その後約2時間にわたって運動後の測定を行う。測定時の姿勢は座位とする。実験中の環境温度を、中立温条件では常に26℃とし、高温条件では運動終了までは26℃、運動後は32℃とする。また、高温条件において、運動後に弾性タイツを着用した場合、および中立温下で運動を行わずに座位安静を保った場合(対照実験)についても実験する。各実験において、ベースライン、および運動あるいは安静後20、55および90分の各時点から、暗算作業をそれぞれ10および30分間連続して行う。運動および対照実験は、次の実験との間にそれぞれ1週間および2日間程度空けて、ランダムに行う。また、全実験は午後の同じ時間帯に行う。 測定および解析:ベースライン、および運動あるいは安静後を通して、血圧、心拍出量、末梢血管抵抗、皮膚血流量、および直腸温と皮膚温(胸部、上腕部、大腿部、および下腿部)を連続的に測定する。皮膚血流量は平均血圧で除して、皮膚血管調節指標である皮膚血管コンダクタンスを求める。また、各暗算作業後に、VASを用いて眠気と集中力を測定し、POMSテストを用いて心的状態の調査を行う。POMSテストの結果は、緊張、活動性、疲労、怒り、抑鬱、および情緒混乱の因子別に集計する。暗算作業の結果については、回答数と正答率を求める。 これらの実験によって、高温環境における運動後低血圧現象について、心的状態および計算能力との関係とその弊害を防ぐ方法の検討を行い、得られた結果は取りまとめ、成果を学会等で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の支払額が予定よりも安かったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品の購入に使用する予定である。
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