平成28年度は、中等度の強度での全身持久性運動を行った後の血圧、心的状態および暗算パフォーマンスの関係を再検討した。被検者は健康な男子学生9名であった。被検者はまず、血圧等のベースライン測定を行った後に、最大酸素摂取量の65%に相当する運動強度での35分間の走運動を行い、その後約2時間まで安静を保った(運動実験)。姿勢は半仰臥位としたが、最後に半仰臥位から仰臥位(n=6)あるいは正座(n=3)に姿勢を変えた。対照実験では、運動を行わずに椅座位安静を保った以外は運動実験と同様にした。測定項目は、血圧、心的状態(POMSによる)、眠気と集中力(VASによる)、暗算パフォーマンス等であった。主な所見は以下の通りであった。収縮期血圧(SBP)は対照条件ではほとんど変化しなかったが、運動条件では運動約1~1.5時間後(暗算テスト時を含む)に対照条件に比べて有意に低下した(p<0.05)。安静時および暗算時のSBPと疲労、眠気と正答率のそれぞれの間に有意な負の相関が認められた(p<0.05)。また、安静時のDBPと疲労、安静時および暗算時のDBPと回答数および正答数のそれぞれの間に有意な正の相関が認められた(p<0.05)。体位変換時の血圧およびPOMSの応答について、仰臥位では両条件において、有意な変化は認められなかった。正座では、SBP、DBPともに半仰臥位に比べて明らかに上昇した。POMSには明らかな変化は認められなかった。本研究の結果から、健康な若年男性において、中等度の強度での全身持久性運動後には、1~1.5時間経過後に安静時や暗算作業時のSBPは低下傾向を示し、それに対応して疲労は上昇すること、および暗算パフォーマンスには変化は生じないことが示された。
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