様々な運動生理学的知見から、適度な有酸素運動は身体活動レベルを保つのみならず中枢神経系に対しても、神経新生などを促す効果があることが明らかになってきている。脳神経とくに運動に重要な大脳基底核や海馬における神経可塑性にはドーパミンが重要であることが知られている。一方、生体内の様々な恒常性はサーカディアンリズムによって保たれている。運動による神経新生にドーパミンやサーカディアンリズムがどのように関わっているかを調べることは、どのような時間帯に運動を行うと効果的な神経新生につながるかの理解につながり、ヒトの身体的健康のみならず脳機能の健康にも役立てる可能性があり、人類の福祉にとって意義のある研究と なると考えている。 神経新生に対するサーカディアンリズムとドーパミン放出の影響を明らかにすることを目指して当該年度は実験を進める予定であった。長時間のドーパミン放出の計測を行う必要が有るため、麻酔下のマウスを用い、刺激などは行わずに、自発的なドーパミン放出の計測を試みた。線条体におけるドーパミン放出を計測したが、明らかなドーパミン放出の変化を捉えることができなかった。実験機器の条件設定などを改良し、サーカディアンリズムに対応させるためにはより長時間の記録(24時間)が必要であると考えられた。また、長時間の連続測定は困難であるため、昼夜の切り替わりを含んだ時間帯を重点的に計測することでサーカディアンリズムの切り替えを含む時間帯を選ぶことでシグナル検出を行い、加えて線条体の背側部並びに腹側部と部位間におけるドーパミン放出の違いを考慮して記録を試みている。
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