従来まで人の発育現象を論じる場合,Scammonの発育曲線がその論拠の基礎的な核を占めていた.しかし,Scammonの発育曲線は85年以上前に提唱した理論であり,コンピューターの存在しない時代で構築された理論である.科学万能の現代において,85年以上経過した理論がはたして有効なのか当然検証されるべきである.今まで明確に検証された報告はない.その理由は検証するべき方法論が確立されていないことが挙げられる.このような背景から,先ずヒトの発育システムの標準化を検討するためにScammon が提唱した理論を再度検証する必要がある。藤井(2015)(2016)は本研究の成果報告ですでにScammonの発育曲線の信憑性について、ウェーブレット補間モデルを適用することで、臓器発育等の曲線記述を可能にし、その速度曲線の挙動から検証した。基本的にはその信憑性は認められると判断した。しかし、あくまでも発育曲線の信憑性であって、4つの発育パターンが独立した発育モデルとして検証されたわけではない。発育モデルパターンの独立性を検証するにはパターンの相違性が客観的に明確化されなければならない。そのために、本研究ではウェーブレット補間法と相互相関関数を併用することで、類似性と同時に相違性を検証することにした。このような手法の確立によって、Scammonの発育曲線から分類される4つの諸属性として,高石ら(1981)が示している脳重量(神経型として),胸腺,扁桃腺(リンパ型として),睾丸(生殖型として),肝臓,心臓 (一般型として)の1歳から20歳までの横断的発育データを使用し、Scammonの発育曲線を再検証した。そして、ヒトの標準的な発育パターンとして新たな発育曲線モデルが構築され、その発育モデルパターンをFujimmonの発育曲線として提唱し,さらに両発育曲線のモデルパターンの違いを分かりやすく、同一スケールで比較発育曲線を記述することに成功した。
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