研究課題/領域番号 |
26350704
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
吉野 聡 茨城大学, 教育学部, 准教授 (10334004)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 球技カリキュラム / PCK / 学習転移 / ボールを持たないときの動き |
研究実績の概要 |
平成26年度においては、次の5つの研究活動を行った。 研究①では球技領域に位置付けられる運動種目の類型について帰納的な手法によって確かめるとともに、各型に位置づく類似の技術や戦術的行為を整理した。特に侵略型(ゴール型)、ネット型、打撃・送捕型(ベースボール型)の類型化の妥当性が確かめられるとともに、各型に位置づく技能や戦術的行為を具体的に整理することができた。 研究②及び③ではバレーボール(研究②)とソフトボール(研究③)を取り上げ、それぞれ技能の水準化を図るとともにゲームへの参加意欲を従属変数とする学校体育において保証すべき技能水準について分析検討を行った。特にバレーボールにおいてはスパイクなどが打てるようにボールをセットする技能の習得が、ソフトボールにおいては内野を超える打撃や内野内のゴロに対して一塁への進塁を阻止できる程度の技能を習得することと肯定的なゲームへの参加意欲を持つこととの有意な関係を明らかにした。 研究④については、特にバスケットボールを取り上げボールを持たないときの動きの改善とゲームへの参加意欲の変化との関係を分析し、フリーな位置へ動いたり、ゴール前のあいた空間へ動いてたりしてパスを受けられるようになることで、ゲームへの参加意欲が向上する等、これらの技能を習得することの意義についての示唆を得ることができた。 研究⑤については、バスケットボールとサッカーのゲームにおけるパス技能について学習転移の分析を行ったが、とりわけボール操作に関わる技術習得の如何が学習転移に影響を及ぼすことを明らかにするとともに、カリキュラムまたは授業づくりにおいて技術的な視点からの分類を考慮すべきであることを再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究費申請時の計画書では球技で教えるべき内容の枠組み、系統性、適時性などを平成26年度では明らかにするとしていた。球技種目の類型や各型に位置づく技術的、戦術的内容について、より確かな知見を示すことができたことは一定の成果を得ることができたと考えている。同様の考え方からネット型やベースボール型についても特定の保証すべき技能水準を示せたことも当初の計画以上に研究を進めることができたと考えている。以上のことから当初の計画以上に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究を進めていくうちに球技において近年関心が集まっている戦術行為にばかり焦点づけて球技カリキュラムを考えることは、児童生徒らの現在あるいは将来のゲーム参加に対する再現性を確保しづらい点も明らかになった。これらの知見を踏まえ平成27年度の研究を進めていきたいと考えている。 特に今一度、近年世界的に影響を与えている球技の指導論(ゲーム理解のための指導、ゲームセンスなど)を再検討し、球技指導に求められるカリキュラム上の課題についてレビューするとともに、それらの知見を踏まえた研究活動を推進していこうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の研究活動から、現在多くの国々で国、あるいは地域レベルで採用されている球技カリキュラムの考え方そのものを詳細に検討する必要があると考えられた。したがって、平成27年度(2年目)はより多くの国際学会に参加したり、国際的に活躍している球技指導論の研究者と情報交換を行う必要があると考えた。そこで少額ではあったが、そのまま次年度使用額にすることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
当初は予定していなかったIPLC(国際フィジカルリテラシー学会)に参加し、より多くの球技(カリキュラム・学習指導)研究を専門とする研究者と情報交換を行い、その後の継続的な研究活動を実現するための関係づくりを行いたいと考えている。
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