本研究の目的は、運動実践を現象学的に分析することによって、運動の実践に不可欠な「身体運動の論理」を明示し、さらにそれを体系化することである。この目的を達成することによって、現象学的運動学の構築が可能となる。その運動学には固有の研究方法が必要であり,それが体育学としての現象学的方法である。その方法を、体育現場で活用できる簡潔な方法として提示することも本研究の背景にある。以上を踏まえ、具体的な運動指導ならびに分析・考察を重ねてきた。 本年度は研究計画の最終年度となるため以下の事柄について研究を行った。現象学についての文献研究、および運動実践における現象学的分析を継続的して行った。その分析結果を、これまでの研究成果と整合させつつ、身体運動の論理として抽出するために考察した。さらに、その論理の階層化し体系化について考察した。同時に、本テーマに関する国外の研究状況を収集し検討した。 研究成果の公表については、以下の通りである。本年度8月に大阪体育大学で開催された日本体育学会において、「運動を『する』から『つくるへ』-身体運動の捉え直し-」という演題で研究発表を行った。さらに、本年度9月に千葉大学で開催された日本体育・スポーツ哲学会において、シンポジウム演者として「身体がもつ『独自の知』の体系」について発表し議論した。また、「身体運動の論理」を枠組みとして、小学校教員に向けた「器械運動の授業を変えてみませんか」という出版を目的とした原稿を作成した。共著の出版の見通しが中断しているので、科研報告書に記載した。さらに、大学体育実技の授業「身体と運動」で使用するためのテキストを整理し、科研報告書に掲載した。加えて、これまで「身体運動の論理」に関連して作成してきた多くの図を、相互に関連づけながら補足・修正し、それらを纏めて報告書の巻末に掲載した。
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