研究課題/領域番号 |
26350709
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
鈴木 聡 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70633816)
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研究分担者 |
近藤 智靖 日本体育大学, その他部局等, 准教授 (50438735)
内田 雄三 白鴎大学, 教育学部, 准教授 (40615803)
山口 拓 筑波大学, 体育系, 助教 (20643117)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 体育科授業研究 / 教師教育 / 授業研究組織の交流 / ミドルリーダー |
研究実績の概要 |
本研究は、体育科を研究する小学校教員の意識調査及び参与観察から、学校研究や官製研究組織の機能構造を実証的に明らかにすることと、明らかになった「機能構造」から、大学教員がセンター機能を果たしながら研究組織を架橋するネットワークシステムを構築することを目的としている。初年度は、情報収集と調査に重点をかけ、先行研究の分析を行った。また、第19回日本体育科教育学会においてラウンドテーブルを実施し、体育科授業研究における現代的課題及び成果について、広く情報を収集することができた。さらに、8月には、東京都の体育科を研究する教育委員会主催の研究組織(官製の教育研究会等)及び体育科を学校研究のテーマにしている学校研究組織に属する教員に対して、ヒヤリング調査及びアンケート調査を実施した。この調査から、「授業研究の在り方」「授業研究の成果」「授業研究の課題」の3視点から教師の意識構造をとらえることができた。この成果は、第65回日本体育科教育学会において発表した。 9月からは、体育科で学校研究を行っている小学校の授業研究に関わり、「発話分析」「研究プロセスの記述」から「年間を通した連続性」の構造を捉えることを試みた。また、3月には、本研究プロジェクト主催の研究会「授業研究組織と研究成果をつなぐ 体育授業Build a Bridge研究会」を開催し、1年次の研究成果を発表すると共に、体育科の研究組織の「研究内容」「研究方法」「在り方」について情報交換を行った。そこでは、研究成果が蓄積されない現状や、先行研究や実践をレビューをする文化が構築されていない問題点と、研究組織における重要な機能として、ミドルリーダーの存在が明らかになった。 今後、この研究会を研究組織のプラットホームになるように位置づけ、官製研究会、校内研究会、民間サークルのコラボレーションの場をつくっていくことを今後の課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画は、全て実施できた。3年間の全体構想としては、授業研究組織それぞれの研究プロセスの相互乗り入れ、学習指導案、授業実践、リフレクションの情報交換や交流を実施していくことを通して、大学をセンターとする日常的な研究交流の実現を目指している。その中で、現在までに行った研究内容は、以下の通りである。 ①体育科授業研究における現代的課題及び成果についての情報収集、分析、発表 ②小学校教師に対するヒヤリング調査及びアンケート調査を実施、分析、発表 ③「体育授業Build a Bridge研究会」の開催 以上の3つの調査及び研究を実施し、本研究の基盤が確立できたととらえている。また、研究協力校と大学研究組織をつなぐネットワークシステムとして、インターネット回線を用いたテレビ会議システムを導入する準備が整い、次年度より本格的に運用を始めることができる見通しを得ている。 当初計画していた海外の現状に関するレビュー及び全国規模の調査には及ばなかったため、次年度以降の課題としたい。以上の点から、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究計画については、まずは、大学と学校研究をつねぐネットワークシステムを立ち上げ、運用する。具体的には、テレビ会議システムを導入し、研究協力校(都内小学校)と、共同研究者の研究室をインターネット回線でつなぎ、授業研究を「研究授業」及び「研究協議会」だけでなく、事前の検討会、単元の全ての授業、研究授業及び単元終了後の授業分析を恒常的に行っていくことを目指す。研究経過は、必要に応じて他の学校や研究期間に開示し、随時意見交流をしながら開かれた授業研究を実施していくことで、本研究が目指す「研究組織を架橋するネットワークシステム」の構築に向けて動き出したい。また、その研究過程及び成果は、第20回日本体育科教育学会及び66回日本体育学会において発表する。さらに、ホームページを立ち上げ、研究過程は日常的に公開し、研究組織が相互乗り入れできる環境を構築、運営していく。日常的には、研究協力校の校内研究会における事前検討会、事後検討会の参与観察を行い、そこで何が検討され、当初の計画がどのように修正されていくかについて詳細な記録を取り、その内実を明らかにすることで、成功裡な校内研究会の在り方についての提言及びモデル化を試みたい。さらに、今年度は校内研究会を推進するリーダー的な教員及びミドルリーダー的な教員に注目し、その意識構造を明らかにすることから、研究組織の中核になる職能についても研究の対象とする計画である。 年度末には、本研究組織が主催する「第2回体育授業Build a Bridge研究会」を開催し、研究成果の発表及び、研究組織の情報交換の場の提供を行う予定である。 なお、当初の研究計画で考えていた海外視察については、ネットワークシステム導入の準備のため困難と判断した。しかし、海外教育事情に精通している共同研究者(山口拓)の調査を軸として、視点を得ていくことは継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
テレビ会議システムの導入に向けて見積もりを取ったところ、当初の計画以上の予算化が必要になったため、物品購入費をできる限り抑え、181,678円を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
テレビ会議システム導入に向けた費用(システム一式及び周辺機器の購入)として使用する。
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