個人を取り巻く学習環境(動機づけ雰囲気、環境の認知など)や人間関係(友人との関係、指導者との関係など)といった環境要因が、スポーツにおける動機づけに影響していることが示唆されている。本研究では、環境要因として「対人関係性」を取り上げ、それらがスポーツにおける動機づけにどのような影響を与えているのかについて、量的および質的な分析を併用した相互補完的なアプローチにより、横断的・縦断的に検討することを目的とした。 本研究期間(3年間)で得られた研究成果は、以下の通りである。 1.本研究の中核となる対人関係性を測定する尺度を開発した。中学生、高校生、大学生を調査対象として、「信頼」「理解」「受容」の内容で構成される質問紙尺度が作成された(社会的一体感尺度)。本尺度の信頼性および妥当性を検討したところ、いずれも十分に満足できる結果が得られた。本尺度の開発は、本研究の遂行だけでなく、対人関係性に関する様々な研究を今後さらに発展させていく上で、極めて重要な意義と役割があると言える。 2.社会的一体感尺度を用いてそれらの特徴およびスポーツ動機づけとの関連を明らかにした。社会的一体感は、中学生、高校生、大学生とも、女子の方が男子よりも高かった。また、中学生と高校生においては、運動部所属者の方が無所属者よりも高かった。 3.社会的一体感は、被受容感、楽しさ、動機づけ(スポーツ、勉強)、満足感と正の相関を示し、被拒絶感、抑うつ、対人的疎外感とは負の相関を示した。 4.最終年度は、これらの量的研究の結果を裏づける知見が、運動部所属者を対象とした半構造化面接においても認められ、社会的一体感の重要性が、量的にも質的にも確認された。社会的一体感と動機づけとの因果関係や影響・促進要因などの詳細については、今後の研究課題として残された。
|