体育を教える教員の職能について、小学校、中学校及び高等学校で優れた授業実践を行っているエキスパート教員へのインタビュー調査の結果に加え、先行研究で明らかになっている体育教師の職能を基に、質問紙を作成し、中学校体育教師及び教員養成大学で保健体育を専攻している学生に対して調査を行い、定量的な手法で分析を行った。調査対象者は、中学校教員212名、学生194名であった。 調査データに因子分析を行い、体育を教える教員に必要な職能の因子構造を明らかにした。その結果、因子Ⅰ「授業をする力」、因子Ⅱ「マネジメント能力」、因子Ⅲ「人間的魅力」、因子Ⅳ「子どもへの対応力」、因子Ⅴ「教員として必要な知識」、因子Ⅵ「教育的信念」、因子Ⅶ「危機管理能力」が抽出された。これらの因子について、教員と学生の比較したところ、すべての因子で、学生より教員の方が、下位尺度得点が高く、これらの職能を教師は,より身につけていることが明らかとなった。また、学生においては、教職へより強く就く意志や教育実習の経験,子どもに関わるボランティア経験などが、教師の職能をより高めることが確かめられた。加えて、教員においては、教師としての経験年数や研究発表会等での授業実践、職場での人間関係の良好さなどが、職能を高める要因であることも確かめられた。 以上のことから、体育を教える教員の職能について、7つの因子が抽出され,その構造及び特徴が定量的にも明らかにできたと考えられる。
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