研究実績の概要 |
平成28年度は,椅子からの立ち上がり(起居動作)動作解析から, KINECT (V2) (Microsoft Co.) を使い,試技条件は手を使わずに「立ってください」という合図で椅子から立ち上がる動作を行わせ,動作に要した時間と動作開始から終了までの間,肩と腰の関節を結ぶ直線と,鉛直方向との成す角(動作角度:以下体幹角度とする)をサンプリング点ごとに算出して時系列とし,その中で最大値を抽出し,2群間の比較を試み,ROC解析によりカットポイントを求めた。2群間の平均年齢には有意差が認められたが,体幹の傾斜角度に性差が認められなかった。自立群(IG群)と介護群(DG群)の起居時の体幹角度は,それぞれIG群18.0 ± 6.1, DG群: 31.0 ± 5.9度となり,これらには有意差が認められた。年齢と体幹角度との間には,r=0.57の正の相関が認められた。このため,年齢補正(ANCOVA)をおこない,比較したところ,IG群18.7 (標準誤差1.1)度, DG群: 29.3 (標準誤差1.8)度となった。ROC曲線 (AUC= 0.94)から,カットオフ値が24.3度(感度と特異度は94.1% , 87.2%)となった。しかし,当初虚弱者の測定人数が17名(健常者39人)と少なかったために最終的に55人に至るまで測定を継続し,健常者は184人までの測定を進めて検討を重ねた。その結果,起居動作は明らかに虚弱者と健常者に相違が認められ,この評価法は短時間に客観的に評価できる指標であることが認められた。しかし,研究初年度に使用したKinect(旧バージョン)は,2年目の平成27年度に新しくv2の後継機器が開発されたために,目的の一つであった運動による虚弱高齢者へのADL改善の効果は実証するまでに至らずv2を使った評価尺度の検討に終始費やしたためにこれらの研究は今後の課題としたい。
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