研究課題/領域番号 |
26350727
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
丸山 真司 愛知県立大学, 教育福祉学部, 教授 (10157414)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カリキュラム開発能力 / 実践的知識 / 年間計画づくり / カリキュラムづくり / ライフヒストリー |
研究実績の概要 |
今年度の中心的課題は、教師歴39年のベテラン体育教師(小学校)、岨和正氏の体育カリキュラム開発に向かう実践的知識の形成プロセスを体育教師としてのライフヒストリーを探る中で明らかにすることであった。以下の点が明らかになった。 岨の39年の教師歴はⅠ~Ⅵ期に分かれ、それぞれの段階で岨はカリキュラム開発(以下、CDと略す)に向かう実践的知識の基盤となる実践研究のテーマを構築していった。Ⅰ期(教師歴:1~4年)は「よい授業を作ること」、Ⅱ期(教師歴:5~7年)は「子どもたちの自主性・創造性を生かすこと」、Ⅲ期(教師歴:8~12年)は「子どもたちの学習意欲を引きだす教材づくり」、Ⅳ期(教師歴:13~20年)は「学校づくり・教育課程づくりを視野に入れた授業づくり」、Ⅴ期(教師歴:21~32年)は「豊かな内容で子どもたちをつなぐ教材づくり、授業づくりからカリキュラムづくりへ」、Ⅵ期(教師歴:33~39年)はⅤ期の継承・発展であった。その中で、初期の授業づくり、教材づくりから岨独自の「年間計画づくり」へと向かい、「年間計画づくり」から「カリキュラムづくり」へと向かう実践的知識が構築されていった。その実践的知識形成にとって重要なことは、①年間の出口像を明確にすること、②重点教材化(大単元化)、③子どもの事実と「わかるーできる」体育の構想、④教材・教科内容の意味を問うこと、⑤学校づくりの視点を持つこと(職場づくりに関わる実践的知識)、⑥職場及び研究会での集団的実践検討、⑦年間計画を構想する体育教科観と体育教師としての信念、⑧教科論レベルでのカリキュラム開発プロジェクト活動への参加から引き出されたモチベーションと知識が明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
H.27-28年度は、体育教師のCD能力形成プロセス解明に向けての縦断的アプローチ(教師経験の違いによる特徴分析)と横断的アプローチ(制度や環境条件が異なる地域における体育教師事例の国際比較研究)によってCD能力形成に必要な方法や条件の解明であった。 H.28年度の研究は、ベテラン体育教師(教師歴39年)のライフヒストリーアプローチによる体育カリキュラム開発に向かう実践的知識の形成プロセスを考察したにすぎず、初任者および中堅の体育教師のCDの実践的知識と能力の分析を手がけることができなかった。さらに体育教師のCD能力形成に必要な方法や条件の国際比較研究も不十分なまま課題として残ってしまった。 研究が遅れた主な理由は、大学の管理運営業務、季刊雑誌の編集長の仕事、複数学会の理事の業務に忙殺され研究時間が十分に取れなかったことと体調不良によるものである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、体育教師が学校でカリキュラム開発をする際に必要不可欠な専門的能力(カリキュラム開発能力)の構造を理論的・実践的に解明すると同時に、体育教師のカリキュラム開発能力の形成プロセスを明らかにすることである。 H.29年度は本研究の最終年度である。遅れているが、以下のような研究課題を推進していく予定である。 (1)ベテラン体育教師(教師歴39年)のライフヒストリーアプローチによる体育カリキュラム開発に向かう実践的知識の形成プロセスを学会誌に投稿する。 (2)「初任-中堅-ベテラン」教師の体育カリキュラム開発能力の特徴を調査研究により解明する。 (3)体育カリキュラム開発研究先進国であるドイツと開発困難地域である南米ペルーにおける体育カリキュラム開発の内実の考察と、学校実践レベルで体育カリキュラム開発に向かう教師のカリキュラム開発能力の特徴や条件について分析する。 (4)(1)~(3)を総括し、体育教師のカリキュラム開発能力の構造とその形成プロセスを明らかにして本研究をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H.28年度においては、ドイツあるいは南米への調査研究に出かける予定であったが、調査に関わる一定の日程が確保できなかったことと調査関係者(ドイツのビーレフェルト大学のProf.Dr.D.Kurz等、ペルーのカトリカ大学教育学部のパトリシア中村等)との調整がつかなかったため、国外研究に従事することができなかった。そのため、国内での研究活動に重点を置き、結果として予算が余ることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
H.29年度においては、①H.30年3月にドイツのミュンスター大学において日独スポーツ科学シンポジウムが開催され、そこで本研究の成果を報告する予定である。 ②さらに、H.29年9月にはペルーのカトリカ大学及び教育庁に調査に行く予定である。2回の国外研究活動によって、H.29年度の研究費は計画通りに使用される予定である。
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