本研究は江戸時代の関東で、本来は江戸幕府から禁止されていたはずの農民の剣術教習をし、いかに剣術が大衆化したかを解明するための剣術関係文書調査が中心である。主な流派は馬庭念流、不二心流、神道無念流、大平真鏡流、直心影流、北辰一刀流などである。馬庭念流樋口家は16世紀に武士であったが帰農し、17世紀に道場を上野国馬庭村に開き、18世紀には近村の中・上層農民や女子が入門し、門人は1685年から1815年まで約7,000人であったので高家新田岩松氏から「剣術の師匠」と呼ばれ一目置かれた。かた稽古が中心で、不二心流の例のように、農民の自己防衛のみならず身心の健康維持を目的としたと考えられる。
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