研究課題/領域番号 |
26350735
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
石田 智巳 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90314715)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生活体育 / 佐々木-瀬畑論争 / スポーツ権 |
研究実績の概要 |
2016(平成28)年度は,生活体育の時代(~1961頃)における佐々木-瀬畑論争がもっている意味を史料をもとに歴史実証的に検証し,そして,その後の民間教育研究団体(学校体育同志会,教育科学研究会・身体と教育部会)の体育実践に与えた影響を探ることを予定していた。その際にキーワードは,「権利としての体育・スポーツ」であった。というのも,生活綴方を用いた教育方法を行っていた佐々木は,早くから「体育と認識」に着目していた。ただし,この認識への着目は,今言われているような,いわゆる「わかる,できる」体育の「わかる」だけではなく,体育を行う土台としての生活や社会へ目を向けさせ,その矛盾を見つめさせ書かせていた。ここに後のスポーツ権の土台となる発想があった。 その後,1963年に第一回全国民間体育研究合同集会において,「民主体育」と「権利としての体育・スポーツ」という方向が採用されたとされる(正木健雄,1975,p.342)。そして,この年は,体育同志会でも運動文化論という体育論の萌芽が示されていく。1965年には新体育連盟が「スポーツは万人の権利」といい,さらに,1970年代になると「スポーツ・フォー・オール」などの影響から国民のスポーツ権が体育同志会を中心とする民間研究団体で研究が始まっていく。 そこで,このスポーツ権を目標に掲げる体育同志会の考え方の変遷を探るとともに,スポーツ権を念頭に置いた場合,体育科教育の目標-内容はどのように描かれて,それを学ぶことでどのような価値形成や人格的側面の形成が期待されるのかについて研究を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016(平成28)年3月の時点では,研究は順調に進んでいると自己評価した。実際に,佐々木-瀬畑論争の当時の意味や意義については,ある程度描き出すことができていた。しかしながら,4月から校務における役職,学会における役職などが重なり,エフォートが下がるという事態が起きた。そのため,秋の学会に向けて夏に集中的に研究に取り組んだが,結局全体をまとめきれずに,研究の期間延長を申し出た。
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今後の研究の推進方策 |
2017(平成29)年度も,また校務や学会の役職が続くが,研究会での全国研究局長としての実務が8月には終わるため,若干の余裕ができると思われる。そのため,今現在も研究を遂行しているが,夏には集中的に取り組み,調査の漏れている部分や確認が必要な部分の聞き取りを行うことで,研究をまとめる予定でいる。そして,これまでに行った研究の総まとめとして,学会誌への投稿を予定している。それにより,研究は一区切りつくと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度と27年度は,計画書に記載した通りに研究が進んでいた。しかしながら,平成28年度に所属する専攻の専攻長になり,平成30年に行われる学部改革に合わせて,教育実習改革やそれに付随する業務が発生した。そのため,近隣の小大連携を行っている小学校との連絡調整,それ以外の実務に時間を割くことになり,研究にあてられるエフォートが極端に小さくなったため,最終まとめにいたっていない。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は,主としてこれまでに行った聞き取り調査の最終確認や,学会や研究会での報告のための旅費を主たる費目としている。さらに,成果をプリントアウトするためのプリンターや紙などの購入を予定している。
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