日本武道・西洋武術を課題とした本研究は,日独の比較研究を行うため,日本の武道及び14世紀始めからのヨーロッパ,とりわけドイツ固有の剣術,格闘術,射撃などの武術成立過程にある思想,文化的,そして技術的要因について調査・検討するものである.そのために,今年度は,西洋武術の調査及び資料収集に関しては,貴重な史料を所蔵すると思われるドイツのヴァイマル市及びゴータ市にある図書館を数日間にわたって訪れた.具体的には、平成30年9月にヴァイマル市にある「Herzogin Anna Amalia 図書館」及びエアフルト大学「ゴータ研究図書館(Forschungsbibliothek Gotha)」を訪れ、両図書館で所蔵されているヨーロッパ中世武術の何冊の史料を調査し,これらの史料の写真撮影及び複写などを行なった.また,ドイツ滞在中にスポーツ科学の研究者及び西洋武術の専門家と本研究についての議論も交わした.日本武道の研究を促進するために,平成30年6月及び平成31年1月には,全日本剣道連盟が主催する杖道の全国的な中央講習会及び地区講習会に参加した.また平成30年12月には,全日本剣道連盟が講師を派遣した居合道講習会に参加し,居合道に関する研究を深めた。加えて,空手道に関する研究・資料収集も一年を通して行われた。このように日本武道の実践研究を追求するだけではなく,その理論研究に必要と思われる資料を収集することにも努めた。さらに,一年間を通して,日本,琉球王国,ヨーロッパ中世武術研究の関連の二次文献史料を調査・収集した.また,以前ドイツ及び北陸地方で行われた空手道に関する修行者の始めたきっかけ・動機(変更)・魅力比較研究のためのアンケート調査の論文(共著)を仕上げ,英語版を科学雑誌に投稿した.さらに,昨年度からは上記の空手道調査に柔道家に行なったアンケートを加えた比較研究論文を執筆中である.
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