研究課題/領域番号 |
26350742
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹之内 隆志 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (50252284)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スポーツ選手 / 心理的競技能力 / 心理社会的発達課題 / スポーツ発達心理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,中学期から大学期に至るスポーツ選手のパーソナリティおよび心理的競技能力の発達プロセスを危機経験(悩んだり努力したりする経験)と心理社会的発達課題の達成度の影響を加味しながら明らかにし,スポーツ選手の心理的側面の発達的変容を検討する「スポーツ発達心理学」の構築に向けた知見を得ることである. この目的のうち,本年度はスポーツ選手の心理的競技能力の発達プロセスを心理社会的発達課題の達成度の影響を加味しながら検討した.本年度までに収集した中学・高校・大学選手のデータを用いて,まず,心理社会的発達課題の達成度を測定する尺度の信頼性を検討し,尺度に含める項目を確定した.次に,心理社会的発達課題の達成度が心理的競技能力に及ぼす影響を学校期ごとに分析した.なお,分析に用いた心理社会的発達課題は,信頼性,勤勉性,同一性,親密性,心理的離乳であった.分析の結果,男女すべての学校期において勤勉性が心理的競技能力に正の影響を示していた.また,学校期間の違いとしては,男子においては,中学選手では信頼性と親密性が心理的競技能力の複数の因子に正の影響を示していたが,高校選手では同一性が,大学選手では同一性と親密性が心理的競技能力の複数の因子に正の影響を示していた.女子においては,中学選手では同一性と心理的離乳が,高校選手では同一性が心理的競技能力の複数の因子に正の影響を示していたが,大学選手では勤勉性以外に心理的競技能力に正の影響を示すものはみられなかった.このように,スポーツ選手の心理的競技能力は心理社会的発達課題の達成の影響を受けながら発達するが,影響を受ける心理社会的発達課題の内容は学校期によって変化するといった発達プロセスが示され,スポーツ発達心理学の構築に向けた有益な知見が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,中学期から大学期に至るスポーツ選手のパーソナリティおよび心理的競技能力の発達プロセスを明らかにすることである.本年度は,主に後者の心理的競技能力について,心理社会的発達課題の達成度の影響を加味しながら発達プロセスを検討した.ただし,前者のパーソナリティについても,次年度での発達プロセスの検討が可能となるように準備を進めた.具体的には,パーソナリティとして自我発達に着目したが,自我発達の段階は文章完成テストを行い,その記述内容によって評定される.そこで,個々の選手の文章完成テストの記述内容を吟味して自我発達段階を評定し,パーソナリティの発達プロセスを分析するためのデータ整備を進めた.このようにパーソナリティについても心理的競技能力についても発達プロセスの分析や分析準備が進められており,そのため本研究はおおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
スポーツ選手の心理的競技能力については,今後,危機経験の影響を学校期ごとに分析し,発達プロセスをさらに明確にしていく.スポーツ選手のパーソナリティについては,文章完成テストの記述内容で評定される自我発達段階を変数として取り上げたが,このような質的データの評定には多大な時間が必要となる.そのため,本年度内にすべての評定が終了しなかった.そこで,今後,自我発達段階の評定を早期に完了させる.そして,学校期ごとに危機経験ならびに心理社会的発達課題の達成度が自我発達に及ぼす影響を検討し,スポーツ選手のパーソナリティ発達プロセスを明らかにしていく.これらのことを行いながら,スポーツ発達心理学の構築に向けた知見を集積していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に開催される国際学会での成果発表のための旅費が見込みより高額となる可能性が高く,次年度の旅費への補填を考慮して,本年度計上していた人件費・謝金を少なく抑えたため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分として請求した旅費に加算して使用する予定である.
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