研究課題/領域番号 |
26350748
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
金久 博昭 鹿屋体育大学, その他部局等, 教授 (50161188)
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研究分担者 |
高井 洋平 鹿屋体育大学, その他部局等, 講師 (20574205)
藤田 英二 鹿屋体育大学, その他部局等, 講師 (50506300)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生理学 / 生体機能利用 / リハビリテーション / 体幹安定性 |
研究実績の概要 |
昨年度の結果において、最大努力による腹部筋群の随意同時収縮(ブレーシング)は腹部筋群を主働筋とする他の動作・収縮様式よりも、高い腹腔内圧(IAP)の発現を可能にすることが示唆された。しかし、ブレーシングをトレーニングとして実施した場合に、IAPおよび四肢の筋力・パワーの発揮能力にどのような変化が生じるのかは不明である。そこで本年度は、ブレーシングによるトレーニングが、腹部筋厚、最大腹腔内圧(IAPmax)および筋力・パワーの発揮能力に対する効果について検討した。被検者は成人男性20名であり、トレーニング群(n = 11)およびコントロール群(n = 9)の2群に分けた。トレーニング群は、2秒間ブレーシング+2秒間休息の組み合わせ10回繰り返しを1セットとするトレーニングプログラムを日に5セット、週3日の頻度で8週間にわたり実施した。トレーニング期間の前後において、腹部の筋厚(被験筋:腹直筋、腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋)、膝関節伸展・屈曲および股関節伸展・屈曲、体幹伸展・屈曲の各筋力、スクワットパワーおよびIAPmaxを測定した。トレーニング期間終了後、コントロール群には、ほとんどの項目において有意な変化は観察されなかった。それに対して、トレーニング群には、内腹斜筋および外腹斜筋の筋厚、IAPmax、スクワット動作時のIAPの上昇率、体幹伸展および股関節伸展の筋力、ならびにスクワット動作パワーが有意に増加した。それらの結果より、ブレーシングによるトレーニングは、腹斜筋の筋厚、最大腹腔内圧、立ち上がり動作における腹腔内圧の上昇率、および股関節伸展が関与する動作時の筋力・パワーの発揮能力を増加させることが明らかとなり、筋力・パワーの改善の要因として、最大腹腔内圧の増加に伴う股関節伸展力の増加が考えられた。また、本研究の結果から、ブレーシングは、外的負荷を必要としない、筋力・パワーのトレーニング手段になり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は「体幹筋群の随意同時収縮(ブレーシング)トレーニングの効果」を明らかにすることを目的として、昨年度は、ブレーシング中の筋活動水準および腹腔内圧の大きさについて検討し、本年度は、ブレーシングをトレーニングとして実施した場合の、腹部筋厚、最大腹腔内圧、および筋力・パワーの発揮能力に及ぼす影響について検討した。その結果、ブレーシングによるトレーニングは、腹斜筋の筋厚、最大腹腔内圧、および股関節伸展を含む動作時における筋力・パワーの発揮能力を増加しうることが明らかになった。ブレーシングをトレーニングとして実施し、腹部筋量、最大腹腔内圧、および筋力・パワーにもたらす効果を検証した例はこれまでになく、本研究が世界で最初である。本研究により得られた知見は、ブレーシングが外的負荷を必要としない、筋力・パワーのトレーニング手段になることを示すものであり、スポーツトレーニングだけではなくリハビリテーションの領域においても意義あるものであるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度と同様にブレーシングによるトレーニング効果について追試を行う予定であり、特に体幹安定性に及ぼす効果について、課題動作時の腹腔内圧および腹部筋群の活動水準における変化との関連で検討する予定である。 さらに、超音波法による筋厚の測定値に基づき、ブレーシング実施中の腹部筋群の筋活動状態について、腹部深部筋を特異的に活動させるといわれている「ホローイング(Hollowing)」との比較から検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた英文掲載料および被験者謝金分の残金を、次年度使用額とした。 今年度の研究実績を英文としてまとめ国際誌に投稿したが、年度末までに「受理」の段階までこぎつけることができず、論文掲載料として予定した金額(約18万円)を次年度使用額とした。 また、実験被験者として予定していた者のうち、数名が本人の都合により実験実施が次年度となったため、被験者謝金として予定して金額(約4万8千円)を次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
査読中である平成27年度の研究成果の論文を国際誌掲載までこぎつけ、次年度使用額分のうち約18万円を論文掲載料として充当する。 平成27年度に予定していながら被験者予定者の都合で実施することのできなかった実験を平成28年度には早急に実施し、次年度使用額分のうち約4万8千円分を被験者謝金として充当する。
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