平成26年度、27年度の調査研究で得られた具体的なデータに基づき、報告書を作成した。その際、日独のスポーツ振興計画策定のプロセスとして、大きく1)変革の方向性を探り、行動を始める段階、2)自治体の基本データ(人口、学校数、社会教育施設数、平均寿命、医療費、労働者数、長期失業者数、歩行・自転車専用レーンの整備状況等)を収集する段階、3)スポーツ活動の現状調査(市民を対象としたスポーツ行動に関するアンケート調査、スポーツ施設数や使用状況調査、専門家に対するヒアリング調査及びデルファイ調査等)を行う段階、4)データの解釈と行動知を導き出す段階、5)目標設定・達成モニタリング(定期的、継続的にモニタリング可能な目標の設定)を設定する段階、6)スポーツ振興計画を作成する段階、7)スポーツ振興計画を実行に移す段階の7つのステージに分けて、考察を行った。 その結果、日独における自治体のスポーツ振興の共通点は、学校政策、青少年政策、健康政策、社会福祉政策など、他の政策分野と密接な関連を有すること、スポーツが地方自治体の全体的発展に重要な役割を果たし得ること等が明らかとなった。 また、ドイツにおける地域スポーツ政策を考える上で、近年、「スポーツ・ダイアローグ」という手法が注目を集めている。「スポーツ・ダイアローグ」とは、市民対話であり、市民自身が当事者としてスポーツ振興計画策定について真剣に検討および議論し、計画内容も透明化を促進できると共に、こうしたプロセスを経ることで行政機関との信頼関係も育まれ、結果として計画が市民に受け入れやすくなるという。平成28年度は、この「スポーツ・ダイアローグ」の考えをベースに、日独共通のスポーツ振興計画作成の連関モデルを作成することにつながった。
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