研究課題/領域番号 |
26350775
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
奥田 睦子 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (90320895)
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研究分担者 |
横山 壽一 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (10200916)
高橋 涼子 金沢大学, 人間科学系, 教授 (80262541)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 障害者スポーツ / 総合型地域スポーツクラブ / 障害者福祉施設 / 連携 / 福祉サービス / 財源 / 事業型NPO |
研究実績の概要 |
事業型スポーツNPOと障害者福祉関連の有償事業の担い手組織との協働の可能性と限界について、以下のことが明らかとなった。 事業型スポーツNPOと障害者福祉施設は、どちらも非営利組織ではあるが、組織も維持・発展していくためには経営上収支のバランスがとれることが求められる。しかしながら、2つの組織で収入源(及びそこからの支出)は大きく異なる。障害者福祉施設は、福祉サービスの内容に応じて、国によって決められている報酬算定基準に基づいた報酬が得られる。したがって、例えばスポーツ活動が中心に据えられた放課後等ディサービスにおいては、放課後等ディサービスの報酬算定基準に基づいて報酬が支払われ、職員給与がまかなわれる。一方で、事業型スポーツNPOで放課後等に障害者スポーツ専門指導者による障害児向けスポーツ教室を行っても民間スポーツ教室と同じ扱いにしかならず、原則的には収入は参加者からの会費のみであり職員給与もそこからまかなわなければならない。また、障害者福祉施設が障害児の余暇支援の一環として、1回2時間程度運動・スポーツのサポートを行うためにガイドヘルパーを派遣する場合と、放課後等ディサービスとしてスポーツ活動を行う場合との報酬を比較した場合、後者の方が報酬は高いという現状があった。そのため、障害児に放課後や休日等にスポーツを提供しようとする際に事業型スポーツNPOと障害者福祉施設とが連携することについて、障害者福祉施設にとっては経営的観点からインセンティブが働きにくいことが明らかとなった。 一方、放課後等ディサービスの指導員に障害者スポーツ指導者の専門的な指導者がいない場合や、放課後等児童ディサービスを利用できる年齢を超えた大人の障害者に対しては、事業型スポーツNPOからの障害者スポーツ指導者の派遣や、両者の連携によるガイドヘルパーを活用した運動・スポーツ支援の可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
事業型スポーツNPOと障害者福祉施設事業者との連携の可能性と限界については、研究成果を上げられたが、障害者が福祉サービスを利用する際に必要な相談支援事業者が支援計画を策定する際に起こりえる課題についてのヒアリングが、十分に実施できなかった。その理由は、本年度予定していた総合型クラブにおける福祉サービスを活用した障害者スポーツ分野の有償サービス事業化モデル案の構築に際して、福祉サービスとしてガイドヘルパーを活用したモデル案を念頭においていたが、研究を進める過程で、就学期の障害児(特に小学生)においては、ガイドヘルパーを活用するよりも放課後等ディサービスの方が事業として成立しやすことが新たにわかり、そちらのモデル化を新規に行ったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
放課後等ディサービスの利用であれガイドヘルパーの利用であれ、障害者福祉サービスの利用については、相談支援事業者によるサービス利用計画作成が必要であることから、相談支援事業者によるサービス利用計画作成時における問題点を明らかにする。特に、移動支援事業を行う事業者と総合型地域スポーツクラブとの連携だけではなく、放課後等ディサービス実施事業者と総合型地域スポーツクラブとの連携も含めて検討する必要性が生じたため、同一法人内で放課後等ディサービスと移動支援事業(特にガイドヘルパー派遣)の両方を行っている相談支援事業者と、訪問介護サービスおよび移動支援事業のみを行っている事業者、相談支援事業者の同一法人内に障害者福祉サービスを提供していないどちらかと言えば障害者福祉サービス分野の知識が少ないと思われる事業者へヒアリングを実施し、相談支援事業者による障害者の余暇支援におけるサービス利用計画作成時における問題点を広く明らかにする。 また、障害者スポーツ領域における総合型地域スポーツクラブと障害者福祉施設との有償サービスの事業化モデル案の作成すると共に、ドイツおよびスェーデンにおける障害者スポーツや障害者福祉に関する調査において、当事者自治の重要性が明らかとなっていることから、そのことも踏まえてモデルを実現するための方策についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
よい成果が得られたため急遽2016年7月に国際学会で発表することにしたが、当初の計画ではそのための旅費等の計上がなされていなかったことから、繰り越すことにした。また、ドイツおよびスェーデンでそれぞれ現地調査を予定していたが、先方との日程調整が上手くいかず、実施できなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年7月にスェーデンで行われる国際学会で研究成果の発表および、ドイツとスェーデンでそれぞれ1週間程度、現地調査を予定している。また、国内調査も県内だけでなく東京と名古屋で行う予定であり、これらの旅費および調査費用に当てる予定である。さらに、研究最終年度であることから、積極的に学会発表を行う際の旅費や、必要に応じて論文の投稿料等としても使用する予定である。
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