研究課題/領域番号 |
26350779
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
谷口 勇一 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (50279296)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 学校部活動 / 総合型地域スポーツクラブ / 協働関係 / 教員文化 / 生徒文化 / 「揺らぎ」 / スポーツ政策 |
研究実績の概要 |
平成26年度研究においては、部活動と総合型クラブの協働関係を一旦は構築したものの、結果的に消滅に至った事例(大分市Nスポーツクラブと野津原中学校)に焦点化し、現時点における当該校教員6名ならびに近隣校教員6名に対するインタビュー調査を実施し、学校(教員)の総合型クラブ活動に対する意識と「揺らぎ」の諸相を理解した。また、総合型クラブ活動に参加している当該中学校生徒(元生徒を含む)12名を対象としたインタビュー調査も併せて実施し、生徒の立場から見た部活動と総合型クラブの協働関係をめぐる意味内容の理解を試みた。 まず、教員調査においては、当該校ならびに近隣校双方において、総合型クラブに対する関心度は極めて低い状況にあることが把握された。なかでも、当該校(野津原中学校)においては、生徒の大部分が「部活動ではなく、総合型クラブで活動している」状況にある。部活動数ならびに参加生徒数も激減状態にある中で、当該校の教員においては、以下のような総合型クラブ観ならびに部活動観を抱いていることがわかった。すなわち、「生徒数自体の減少もあるであろうが、地域に魅力あるスポーツ環境が存在する以上、そちらに生徒たちがシフトしていくことは当然」「部活動は学校教育上大きな意味を有しているはずだが、実際は運営自体に厳しさが付きまとう…」等であった。 一方で、総合型クラブに参加する生徒ならびに元生徒からは、教員とは異なる意識が垣間見られた。すなわち、「総合型クラブも楽しいが、部活動で学校の先生方にみてもらいたい気持ちが大きい」「本当ならば、部活動でやりたい。先生たちに僕らがスポーツで頑張っている姿をみてもらい評価してもらいたい」等であった。 本研究における最終の狙いは、「総合型クラブ存在に伴う部活動の再生」に向けられている。今後(平成27~28年度)にかけて継続的にその可能性を探求してみたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度の研究計画は、当該事例における教員と生徒双方に対するインタビュー調査が中心的課題であった。しかしながら、調査を進行する上で、地域住民ならびに市教育委員会関係者(指導主事)への接近が可能となった。 部活動という学校教育活動と総合型クラブ活動はともに、地域社会の重要な「教育材」であるといえよう。その「教育材」に対する地域住民の意識を把握できたこと、さらには、教員を指導する立場にある指導主事への接近が為されたことは、本研究の継続および成果獲得に向けて重要な意味があったと感じている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、上述した教育委員会指導主事への意識調査を実施する。その意図するところは、以下に集約できる。すなわち、部活動ならびに総合型クラブ育成ともに、行政の関与が大きい点にある。部活動は学校教育活動の一環である関係上、教育委員会による所掌活動といえよう。対して総合型クラブにおいては、今日多様な行政による支援体制が確立されつつあるものの、その多く(当該事例においても)は教育委員会所掌による育成展開が為されている。 部活動と総合型クラブの協働関係が叫ばれつつある今日の状況に鑑みたとき、部活動ならびに総合型クラブ育成の両方に関与することとなる指導主事を取り巻く意識の深層に迫る作業は大きな意味を持つといえよう。なぜならば、指導主事のほとんどは「教員」である。遅々として進行しない部活動と総合型クラブの協働関係性に最も大きく関与しているパーソンが教員であるとしたとき、指導主事へのアプローチは不可欠なものと思われる。 平成26年度に実施した調査(教員ならびに生徒)結果を踏まえつつ、指導主事への調査活動を鋭意実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査研究出張を予定していたが、急きょ先方の都合が悪くなりキャンセルとなった為(旅費の繰り越し)。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度末に計画していた調査研究出張(福岡県久留米市における先行事例調査)を実施する予定である。
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