本研究では,体育・スポーツにおける情報通信技術(ICT)の活用手法について,主に指導やコーチングでの利用に焦点を当て体育系大学での指導実践と教育実践を通じて実証的な検討を行った. 体育・スポーツのフィールドで利用可能なデバイスとして実用性が高く汎用的であると考えられたのはタブレットコンピューターであった.平成26年度時点でトップレベルの競技環境など導入が進みつつあり,さらに初等教育での導入も見込まれていた.そこで研究代表者らの所属する大学でも新入生のタブレット必携化を実施し,学生が自ら持ち込むタブレットを用いた教育と指導を行った.また,競技場など学校における体育・スポーツ施設におけるICT環境の要求要件を整理するとともに,実際にいくつかの競技場にそれらを構築し,検証を行った. 所属大学においてタブレットの必携化後すぐにそれらの活用状況を調査したところ,必携化そのものは好意的に捉えられていたものの,手段がわからないなどの理由であまりタブレットが利用されていない状況が確認された.そこで授業などの教育機会を通じスポーツ向けアプリやクラウドサービスの活用事例を紹介し,これによって機器の携帯機会と利用機会が増加することを確認した.また,いくつかの実技科目授業においてはネットワークカメラや大型モニターなどを使った教育実践を行い,その教育上の効果や問題点について検討を行った.タブレットとウェブアプリケーションを使った実技科目の「授業ノート」の試行では,映像による記録やそれによる振り返り学習が授業の中に円滑に取り込めることが確認できた. 競技スポーツにおけるICT活用の事例としては,普及が進むスマートフォンや無償または安価に提供されているクラウドサービスを実際の大学クラブチームで利用実践し,効果的に競技支援が展開できた.
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