本研究は、スポーツを活用したまちづくりについてその活動推進組織の生成過程に着目して組織の分類と活動の現状、課題についてフィールドワークを通じて明らかにした。主要調査項目は活動推進担当組織、組織の形態・構成・活動・予算、生成過程、成果を計るモニタリング指標の有無などを網羅した。ラグビーW杯や2020年五輪大会に向けてスポーツを通じた地域づくりに取り組もうとする新規地域と、プロ野球やJリーグのキャンプ、国際メガスポーツイベントを契機として、従来からスポーツ合宿地として誘致や運営が展開されている既存地域が見られた。既存地域では、一時的な各国代表レベルのキャンプ誘致は現在のキャンプ受入れ団体が離れてしまうリスクを考慮し行わない地域と、既存キャンプ受入れ種目と異なる種目であれば利用施設や時期が被らないことから積極的に誘致したいと考える地域があった。 活動推進組織の生成過程においては、ほぼ全ての組織が自治体の主導であるものの、スポーツ関連団体、実行委員会、コンベンション、NPOなどの組織と共同推進している。実質的な事務局や取りまとめは自治体が行っており、今回の調査地域においては組織生成過程に違いには見られない。この傾向は、韓国平昌オリンピック・パラリンピックにおいて、韓国国内でトレーニングキャンプを受け入れた地域においても同様であった。 モニタリング指標については、日本の調査地域では合宿受入れ団体数、延べ参加者数、延べ宿泊者数、これらに伴う経済効果(一部地域では宿泊施設から直接数値を提供)などが挙げられた。また一部地域では利用者への満足度調査なども実施されていた。韓国の調査地域では同様の指標が用いられていたが、経済効果については具体的な数値は把握されていなかった一方、年度ごとの税収の変化、飲食・宿泊業などスポーツ合宿に直接関わる事業者の声を把握することに努めていることが印象的であった。
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