研究課題/領域番号 |
26350787
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
鯉川 なつえ 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (70338424)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 低用量ピル / 女性アスリート / 骨密度 |
研究実績の概要 |
本研究は女性アスリートの低用量ピルの服用による骨密度等の変化を検討した。 方法は女子長距離ランナー10名を正常月経群5名と無月経で医師の診断により低用量ピルを処方された5名(以下ピル群)に分類し、骨密度(腰椎)、身体組成および骨代謝マーカー等の測定し、10ヶ月後、16ヶ月後、21ヶ月後の変化および群間の比較をおこなった。 その結果骨密度は、正常群の事前値が0.900±0.016g/ cm2、10ヶ月後0.920±0.028 g/cm2、16ヶ月後0.925g/0.012 cm2、21ヶ月後0.933±0.019g/ cm2であり、有意(p<0.05)に上昇した。ピル群の事前値は0.884±0.420 g/ cm2、10ヶ月後0.993±0.10 g/ cm2、10ヶ月後0.912±0.107 g/ cm2、ピル16ヶ月後0.948±0.090 g/ cm2であり、事前値に比べ10ヶ月後に骨密度が高まる傾向(p<0.07)がみられた。また群間の交互作用はみられなかったが、正常群に比べピル群の方が有意(p<0.05)に骨密度が低い集団であった。 骨吸収を表す尿NTXは、ピル群の事前値が53.30±27.66nmolBCE/mmolCREで10ヶ月後に28.26±11.46nmolBCE/mmolCREに有意(p<0.05)に低下がみられた。このことより、無月経アスリートはピルの服用10ヶ月後に骨吸収が抑制され、ゆるやかに骨密度が高まる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学生女子長距離ランナーで、正常月経および無月経を有する対象者に対し、年間を通した統制と定期的な測定を実施することができている。そのことにより、着々とデータを増やすことができている。 また、先行研究で「低用量ピル服用による骨密度増加」に否定的な研究者にインタビューをしたところ、「骨密度だけを見るのではなく、骨代謝マーカーをおさえることで新たな知見がみられるかもしれない」とアドバイスをもらった。本データもみてもらい、非常に興味をもってもらった。対象者数が増えることで、かなり高い確率で仮説を検証できるのではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は対象者の健康状態およぼび運動量を統制しながら、定期的なデータ収集を実施する。そして、できるだけ早くデータをまとめ、「低用量ピル服用で骨密度は上昇しない」という欧米諸国での定説に対し、日本の女性アスリートの骨密度の変動について、骨代謝マーカーを用いて説明したい。 さらに、PMS(Premenstrual syndrome)症状のある女性アスリートに対する低用量ピル服用の効果についても検討をすすめている。
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