<目的>Female Athlete Triad(以下FAT)の改善は「エネルギーの充足=食習慣の改善」となるが、時間がかかるため、日本ではその間にOral Contraceptives(以下OC)を服用するのが一般的である。しかし、OC服用期間と骨への効果については明らかにされていない。そこで本研究は、無月経女性アスリートのOC服用による骨動態の変化を検討しOC活用プログラムを提案することを目的とした。 <方法>対象者は大学生女子中長距離ランナー10名であり、月経のある正常群5名と、視床下部性無月経で医師よりOCを処方されたOC群5名に分類した。測定項目は、腰椎骨密度測定、体組成の測定、血液検査、尿検査、および自作の調査票であった。これらを、実験前、10ヶ月後、16ヶ月後、21ヶ月後に実施した。 <結果>事前値は、腰椎骨密度は正常群(0.900±0.02g/cm2)、OC群(0.89±0.12g/cm2)ともに1.00 g/cm2の基準を下回っており、エストロゲン値(E2)は 無月群、LEP群ともに、日本臨床スポーツ医学会が「疲労骨折のハイリスクグループ」と定める20pg/mlのレベルであった。腰椎骨密度は時間にのみ主効果が認められ、OC群は事前値と10ヶ月後に有意な差(p<0.05)がみられた。尿NTXは、OC群にのみ事前値に比べ10ヶ月後に有意(p<0.03)に低下がみられた。また、ペントシジンは、OC群のみ有意(p<0.007)に上昇し、正常群とOC群の10ヶ月後の値に有意(p<0.01)な差が認められた。体組成は、両群ともに有意な差はみられなかった。 <考察>このことより、無月経ランナーは食習慣の改善がみられるまでの間、OCを服用することで、「骨の保護=疲労骨折の予防」に貢献する可能性が示唆された。
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