28年度は計画通り、前年度までに対象とした各クラブに所属する(した)被災したメンバーの復興要因とクラブ活動との関係性について検討した。調査対象者はスポーツ少年団(以下「スポ少」)メンバー5人(A~Eさん:全て男性)、成人クラブメンバー5人(F・Gさん:女性、H~Jさん:男性)である。10人の復興の程度は一様ではない。調査時点で多くは自宅再建に至っていたが、Bさんは仮設住宅暮らしであり、Iさんは自宅再建の目途さえ立っていない状況であった。そのためここでは、あくまで各々の調査時点までの復興への道程でクラブ活動がどのように役立ったか(意義)に関する概要を示す。 まず、大震災後暫くは皆がスポーツを行う機会を失った。町中にスポーツどころではないという雰囲気も漂い、仮設住宅暮らしが続く者もいた。そうした中、ほとんどが心身のストレスに継続的に苛まれたが、大震災から1~2ヶ月後に再開されたクラブ活動(スポーツ活動)に参加することでそうしたストレスは解消されていったという。また、被災に関わる嫌悪感や不快感をクラブ活動の間は忘れることができたともいう。Cさん、Gさん、Iさん以外は専らこうした意義を挙げた。Cさんは、そもそもクラブ活動に打ち込むことで、大震災当初を除けばストレスや嫌悪感等を感じなくなったという。Gさんは唯一津波に遭い、流されていく人(遺体も含め)を目の当たりにした。ショックのあまり神経症(無気力状態、睡眠障害等)を患い、心療内科に通ったのであるが、10ヶ月ほど経つと父の勧めでクラブ活動に参加し始め、その後は熟睡できるようになったという。温かいメンバーとの交流にもより症状は徐々に回復していった。Iさんの場合は自宅再建の目処が立たず、調査時点でも不安を解消することはできない状態であったが、クラブ活動はそうした日常的な不安を和らげてくれたという。クラブ活動が「癒し」になったとみられる。
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