平成28年度には,ウイルチェアラグビー選手5名(C6-C8:3名,他,年齢:28.6±8.6歳,BMI:9.3±3.8)を対象に,ウイルチェアラグビー中の身体活動量(加速度・心拍数)および日常生活における活動量を調査した.さらに,同意の得られた3名に対して3日間の日常生活活動量および栄養摂取量の調査(カロリー,蛋白質,脂質,ビタミンC,鉄)を実施した. 加速度から求めたウイルチェアラグビー中の消費カロリーは104.0±31.5kcal(1.8±0.6Mets)であった.平成26,27年度に実施した車いすマラソン競技者における調査結果と同様に,ウイルチェアラグビー中の身体活動量(162.7±46.7mG/counts,107.6±9.2bpm)は,同被験者の日常生活活動量よりも高いことを確認した. 栄養摂取量の調査結果も平成26,27年度に実施した車いすマラソン競技者の結果同様に各被験者ともに必要エネルギー量は充足しているものの(97.9%),脂質過多(115.1%)を認め,タンパク質(74.0%),ビタミンC(71.7%),鉄(89.6%)は不足傾向にあることを確認した. 平成26-28年度に得たこれら頚髄損傷者・他の調査結果から,頚髄損傷者はスポーツに参加することで日常生活での低い活動量を増加させているが,生活習慣病予防に有効とされる中等度(3~6Mets)の運動は実施できていないことが明らかになった.一方,調査対象となった頚髄損傷者・他の栄養摂取量は健常者と比べて低いが活動に対する必要エネルギー量は充足していることが確認できた.従って,エネルギーの出納という観点からは均衡がとれており,重度の身体機能障害による日常生活での活動の低下があってもスポーツに参加することで生活習慣病のリスクを低下できる可能性が確認できた.
|