研究実績の概要 |
Kilty(2006)は女性スポーツ指導者(以下、女性指導者)には「外的障壁」と「内的障壁」の2つの障壁があることを指摘し、「外的障壁」とは女性指導者と男性指導者では指導評価基準が異なり、それは男性指導者に有利に働くこと、「内的障壁」とは女性は自信がなく、一歩踏み出すべき時に引いてしまう心理的障壁を報告した。本研究は、女性指導者に内在する「内なる壁」を明らかにするため、女性が指導者として活動する際に障壁となる心理的要因の抽出を目的とした。 本研究では女性指導者の内的障壁をコーチング効力感(スポーツを効果的に指導することに対する自信(Feltz et al., 1999))とし、将来スポーツ指導を志すスポーツ系大学生、男女276名を調査対象とした。結果、女子学生は男子学生よりもスポーツ指導において効力感を低く見積もる傾向あることが明らかになり、今後、女性指導者の登用と促進を推し進めていく上で、女性のスポーツ指導における効力感の向上が重要であることが示唆された。 さらに男性中心のスポーツ指導現状を踏まえ、男性指導者からみた女性指導者登用を阻害する社会心理的要因を検討するため、現役のサッカー指導者に調査を実施した。結果として、男性指導者のコーチング効力感と女性指導者選考条件との間に正の相関が見られた。その項目は「現役選手時代の競技実績」「指導者としての実績」(p<.05)であった。男性指導者から見て女性指導者登用の進捗が進まないのは「指導実績不足」と考えていることが分かった。女性指導者のスポーツ指導の場が少ない現状において、女性が指導実績を積むことは困難であり、政策的な女性の指導の場を政策的に提示する必要があることが明らかとなった。
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