研究実績の概要 |
本研究の目的は,地域の公共スポーツ施設において障害者がスポーツを実施するための方略を検討することにある.スポーツにおけるインクルージョンには,(1)日常的なスポーツの実践,(2)スポーツイベントを通した実践の双方からのアプローチが必要になる.(1)は,国内障害者優先スポーツ施設の78%を占める日本障がい者スポーツ協会非加盟の障害者優先スポーツ施設89施設を対象に質問紙調査を実施し,64施設の回答を得た(回収率:71.9%,2015年12月~2016年1月).施設のインクルーシブな活動に関する9項目にクラスター分析(ウォード法,平方ユーグリッド距離)を施し,エクスポート志向型17施設(28.3%),インポート志向型23施設(38.3%),クローズド志向型20施設(33.3%)の3つに分類した.地域のスポーツ資源と連携しているエクスポート志向型は組織構造の複雑性が高く,周囲からロールモデルとして認識される傾向にあった.エクスポート志向型に分類された2施設(設置者:下関市,兵庫県)を対象にヒアリング調査を実施した(2017年12月).両施設はいずれも各県下の障がい者スポーツ指導者協議会の事務局を担う等,人的資源の情報を得やすい状況にあった.(2)は,インクルージョンをコンセプトとした陸上競技大会の参与者を対象に「する」「みる」「ささえる」という立場を踏まえて,霜島ら(2013年)の参加・観戦動機に関する11項目,金山ら(2013年)の体育におけるインクルージョンに関する5項目の合計16項目からなる質問紙調査を実施した(2017年8月4日,回答者数:選手63,ボランティア・競技役員30,大会役員53,介助者・観戦者74,計220).結果,障害のある選手は,インクルーシブな大会に対する好意的な意識が非常に高く,今後は特に健常者にとってのインクルージョンの価値の検討が示唆された.
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