平成29年度は、前年度2月と3月に行った5名のアメリカ人のバスケットボール指導者に関するインタビュー調査の結果を分析し、11月にカナダのウィンザーで開催された北米スポーツ社会学会(NASSS)で研究発表を行った。さらに、3月にアメリカのハワイで3名のアメリカ人バスケットボールコーチへのインタビュー調査を行った。 これらの調査は、前年度に発表した日本の高校バスケットボール指導者の指導観や暴力に関する態度と比較をするために行われた。本研究ではミシェル・フーコーの「対象化」という考えを理論的枠組みとして、インタビュー内容の分析を行った。インタビュー調査の結果、8名の指導者は選手に暴力行為を一切行っていないことが確認された。アメリカは訴訟社会であり、指導者による暴力行為が確認された場合には、コーチは解雇され、保護者や選手から訴訟で訴えられる可能性が高い。こうした事情から、アメリカのバスケットボール指導者にとって選手への暴力行為は一切許されない行為として認識されていた。しかし、選手への叱責、怠慢な行為に対して罰走や試合への出場停止等を課すことは日本の指導者と同じように確認された。さらにアメリカ人の指導者はポジティブ・コーチング・アライアンス(Positive Coaching Alliance)等の影響を受け、選手の欠点や失敗を叱責するよりも、選手の積極的な姿勢を肯定的に褒める指導方法に変わってきていることがわかった。一方で、アメリカ人の指導者は校則やチーム内のルール、試合出場に関わる選手選考の権力を通して、選手を「従順な」存在にしていることが示唆された。さらに全ての回答者はキャプテンをコート内のコーチとして重要視しており、他の選手との意思疎通を図る役割を期待していた。 さらに、3月に前年度発表した論文を国内の研究雑誌に投稿した。
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