研究実績の概要 |
これまで、低酸素環境を用いて持久的運動能力を高めることを目的としたトレーニング法が、様々な手法で実践されている。しかし、平地での持久力を高める決定的なトレーニング法が確立されているとは言えない。本研究では、短時間の低酸素暴露(12%O2・15 min+20.9% O2・10 min, 4 セット/日)と常酸素環境でのトレーニングを組み合わせる方法を検討した。その結果、この方法によって筋の脂質代謝能力が向上することで、持久的運動能力が顕著に向上することが明らかとなった。
最終年度においては、短時間の反復低酸素暴露が、長期間にわたってトレーニングを積んだマウスにおける全身持久力向上に及ぼす影響を観察した。漸増負荷走による最大運動能力テストでは、Tr群よりもIntTr群で有意に高い値を示した。下肢骨格筋において、Type-I筋線維の割合と脂肪酸アシルCoAをミトコンドリアに取り込む酵素であるCPT活性がIntTr群で有意に高い値を示した。また、筋細胞核におけるPGC-1αのタンパク発現が、ヒラメ筋で5.2倍、腓腹筋の赤筋部位で3.1倍IntTr群で高い値を示した。さらに、筋細胞内に脂肪酸を取り込むタンパク質であるFAT/CD36の発現が、腓腹筋赤筋部位で21%、Tr群よりもIntTr群で有意に高い値を示した。これらのことから、短時間の反復低酸素暴露は、遅筋線維の発現促進や脂質代謝を高めることで、幼若期から長期間トレーニングを積んだマウスの全身持久力向上に寄与することが示唆された。
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