研究課題/領域番号 |
26350813
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
福田 崇 筑波大学, 体育系, 助教 (30375472)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アメリカンフットボール / 脳振盪 / 頭部作用力 / ひずみゲージ / デジタルフィルタ / 推定法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「アメリカンフットボール(AF)における衝突時の頭部への作用力状態を明らかにすることである」。これまでに米国では加速度計をヘルメットに装着することにより衝突時のヘルメット外殻への作用が測定されている。しかしながら、この手法はヘルメット外殻に及ぼす衝撃作用を測定するものであり、頭部自体への作用力を直接評価することはできない。そこで申請者はヘルメット外殻に貼付したひずみゲージ信号から、緩衝材により応答が低減された後の頭部作用力応答を推定するデジタルフィルタを構築することにより、衝突時の頭部作用力を推定する手法を確立する。 そこで、初年度には「ヘルメット外殻における衝突時の頭部作用力の接触部位による違いの定量化」を求めることを課題とした。ヘルメットと角材の間が密着するよう加工した角材にヘルメットを被せ、フォースプレート上に設置した。もう一方の落下させるヘルメットには、角材の周囲にスポンジを覆うことにより、ヘルメットと角材ができるだけ密着するようにした。衝突力測定用ヘルメット外殻には、4つのひずみゲージを貼付して、それらひずみゲージに囲まれた範囲内で衝突させた。落下用ヘルメットを、衝突力測定用ヘルメットの複数個所(前方・側方・後方・頭頂)に落下させ、衝突させた。解析は衝突時のAFヘルメット作用力を地面反力計により測定し、同時に、ひずみゲージの出力をひずみアンプを用いて測定した。なお、各信号のサンプリング周波数は、1kHzとした。この衝突実験を行うにあたって、再現性の高い衝突装置を事前に作成した。現在は得られたデータの処理中である。 これまでに頭部自体への作用力を確認した報告は国内外でない。衝突時に頭部のどの位置にどの程度の作用力がかかるのかを知ることは、AFにおける脳振盪の解明には不可欠である。得られたデータは脳振盪予防対策の基礎資料となり、この研究の重要性は高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の研究課題として以下の3つを挙げていた。 1.ヘルメット外殻における衝突時の頭部作用力の接触部位による違いの定量化 2.既知の固定作用点用デジタルフィルタの未知の作用点への拡張および作用点位置の推定法の提案 3.上記手法の有効性の検証 この中で、課題1のみ終了している。遅れている理由として、以下の2点が大きく影響したと考える。 1.ワイヤレスひずみゲージ自体がほとんど流通されていなく、信頼できる機器の選択に多くの時間を要した。 2.再現性の高い落下装置を製作して、その精度を確認することに時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に実施予定であった以下の2つ課題を実施する。 1.既知の固定作用点用デジタルフィルタの未知の作用点への拡張および作用点位置の推定法の提案 2.上記手法の有効性の検証 次に、平成27年度の研究計画課題として「模擬衝突時における頭部作用力の確認」を実施する。初年度の研究より得られた複数の信号入力を用いて構成したデジタルフィルタの出力精度を向上させるために,被衝突用ヘルメット内のインナーパッド内部に接触圧検出用の圧力センサーを装着して活用する手法を考案する。実施内容は以下の通りとする。 (1)衝突時のヘルメット外殻への作用力の推定 (2)圧力センサーを用いた衝突時インナーパッド作用力(頭部作用力)の計測 (3)衝突条件(衝突方向)の違いによる推定精度の比較 最終年度の研究計画課題として「対人による実際の衝突時における頭部作用力の確認」にむけて、平成27年度までに考案した手法により,ひずみゲージ、加速度計、圧力計を装着したヘルメットを用いて、対人での衝突実験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたワイヤレスひずみゲージの流通量が少なく、サンプリング周波数10kHzのものは市販されていなかった。そこで、サンプリング周波数1kHzのもので本研究が遂行できるのか確認することに多くの時間を費やしたため、当初、購入を予定していた加速度計一式とパーソナルコンピューターの購入も見合わせたことで未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
購入を見合わせた加速度計一式とパーソナルコンピューターの購入に充てる予定である。
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