研究実績の概要 |
サルコペニア (加齢性筋減弱症)は、様々な因子により調節を受ける。オートファジー不全によりサルコペニアが促進される可能性が高い。我々の先行研究では、オートファジーに関係するp62/SQSTM1はマウスの加齢筋線維に異常沈着するものの、それと協力して働くLC3は活性化していない (Sakuma K, et al., p62/SQSTM1 but not LC3 is accumulated in sarcopenic muscle of mice. Journal of Cachexia, Sarcopenia, and Muscle, in press) 。このオートファジー不全は、運動、カロリー制限あるいは低蛋白質食で軽減される可能性が高い。そこで本研究では、低蛋白質食によるサルコペニア軽減効果を加齢マスを用いて調べた。実験動物には20ヶ月齢のC57Black/6J雄マウスを用い、片方の群に標準食、もう片方の群に低蛋白質食を4ヶ月間摂取させた。実験完了後、マウスの両脚から腓腹筋と大腿四頭筋を摘出した。瞬間凍結した筋からミクロトームにより横断切片(8 μm)を作成し、細胞膜を染めるために抗ジストロフィン抗体を用いた蛍光免疫組織染色を行なった。平均筋線維横断面積を算出するために、各個体につき約300本の筋線維を用いた。またオートファジーのマーカーであるp62/SQSTM1の発現状況も調べた。標準食を施したマウスと比べて、低蛋白質食による筋重量、平均筋線維横断面積の有意な差は認められなかった。またp62/SQSTM1陽性細胞の割合も、両群間に有意な差は認められなかった。以上のことから今回用いた低蛋白質食は、マウスにおけるサルコペニアを軽減しないことが確認された。
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