骨格筋から分泌される生理活性物質は、マイオカインと呼ばれており、運動による健康の増進効果の一端を担っていることが報告されている。本研究では、筋収縮によって分泌が調節される新規マイオカインを定量プロテオーム解析により探索し、それらが実際に分泌されるかについて、骨格筋収縮モデルを用いて明らかにすることを目的とした。 平成28年度は、これまでに定量プロテオーム解析で選択された分子のうち、未検証であった分子(P01325)を対象に、発現と分泌の検証を行った。その結果、P01325骨格筋での発現・ならびに分泌されていることが示唆された。一方、この分子は分子量が小さいために検出が他の分子より難しく、収縮により分泌が調節されるかについての正確な証明ができていない。今後、新たな研究費を取得することにより、その分泌を明確にして、その生理的意義を明らかにする必要がある。 研究期間全体の結果から、定量プロテオーム解析法をもちいて筋収縮により分泌が変化する14個のマイオカイン候補分子を選択した。その中から市販抗体が利用できる10分子を対象とし、骨格筋細胞を用いて発現と分泌の検証を行ったところ、10分子全てが骨格筋に発現しており、そのうち8分子が骨格筋から分泌されていることが明らかになった。これら8分子のうち7分子は、収縮による調節性の分泌は確認できず構成性に分泌されるマイオカインであると考えられた。残り1分子は現時点では分泌が収縮により調節されているかが明らかになっておらず、今後のさらなる検証が必要である。
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