研究課題/領域番号 |
26350818
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研究機関 | 弘前学院大学 |
研究代表者 |
吉岡 利忠 弘前学院大学, 社会福祉学部, その他 (50056933)
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研究分担者 |
後藤 勝正(山下勝正) 豊橋創造大学, 保健医療学部, 教授 (70239961)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 長寿遺伝子 / AMPK / 萎縮 / 再成長 |
研究実績の概要 |
『運動は寿命を延ばすのか?』という疑問に対して、未だに明確な回答は得られていない。運動刺激の種類や強度は多種多様であり、こうした刺激に応じて生体は効果の発現あるいは障害の発生などの適応を示す。つまり、運動刺激を受容し、その種類を認識し、最適な適応を示すシステムの存在が示唆されるが、その実態は不明である。本研究では長寿遺伝子サーチュイン(SIRT)に着目した。SIRTは、様々な細胞ストレスに対する防御機構を賦活化し、老化に伴う疾患を予防することで寿命延長に働くと考えられている。しかし、エネルギーを多量に消費すると共に、活性酸素などの種々の代謝産物を発生する運動と言う刺激に対するSIRTの応答は不明な点が多く残されている。そこで本研究では、運動に対する骨格筋可塑性応答におけるSIRTの役割を追究することを目的とする。本研究の目的を達成するために、3年計画で研究を遂行し、平成26年度はその1年目に当たる。まず、平成27年度以降に実施予定の加齢マウスを用いた実験のために、マウスの飼育を開始した。現時点で、特に問題もなく順調に飼育が継続されている。また、生後10週齢のマウスを用いて、骨格筋量変化に伴うSIRT1およびAMP依存性タンパクキナーゼ(AMPK)の変容の解析を行った。骨格筋量の変化は萎縮とその後の再成長とし、マウスに対して2週間の後肢懸垂を施し、萎縮を惹起した。一部のマウスを通常飼育に戻して、2週間継続飼育して、萎縮骨格筋に再成長を促した。その結果、骨格筋の萎縮に伴いSIRT1ならびにAMPK発現量に変化は認めなかった。萎縮筋の再成長によりSIRT1およびAMPK発現量は共に有意に増大した。したがって、骨格筋に対する運動刺激の増加に応じてSIRTならびにAMPKは活性化することが示唆された。今後、さらに解析を進め、運動に対する骨格筋可塑性応答におけるSIRTの生理的役割を明らかにしていく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、運動に対する骨格筋可塑性応答におけるSIRTの役割を追究すると共に、「運動が寿命を延ばすのか」という命題についての回答を得ることを目的として3か年計画で実施される。研究初年度である平成26年度は、加齢マウスの実験を行うための飼育開始ならびに骨格筋量の変化に対する骨格筋SIRTならびにAMPKの挙動を明らかにする計画であったが、その目的は概ね達成できている。したがって、おおむね順調に推移していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
3か年の研究計画の2年目に当たる平成27年度は、平成26年度の研究成果を基にして、骨格筋細胞の増殖と分化におけるSIRT1およびAMPK活性の生理学的意義を追究する。マウス筋芽細胞由来C2C12細胞を用いて、C2C12細胞の増殖および分化に及ぼすSIRTならびにAMPKの影響を検討する。AMPKの活性化は、AMPK活性化剤であるAICARを培養液中に添加することで惹起する。また、RNA干渉法を用いて、siRNAをC2C12細胞にトランスフェクションして、AMPKをノックダウンすることで、AMPKの不活性化の影響を追究する。さらに、平成26年度より飼育を開始した加齢マウスを用いて加齢と運動が骨格筋SIRTに及ぼす影響についての検討に着手する。さらに、哺乳類骨格筋細胞におけるストレス応答の転写因子である熱ショック転写因子1(HSF1)を欠損したHSF1-nullマウスを用いて、運動史で気によるSIRTの応答におけるストレス応答の関与を追究する。骨格筋に対する運動刺激は、骨格筋に対する負荷量を制御した実験モデルである後肢懸垂モデルによる荷重除去およびその後の再成長を用いる。各処置後、経時的にサンプリングを行い、RNAならびにタンパク質を抽出する。野生型マウスを対照として、各種遺伝子発現の解析を行う。以上より、加齢ならびに運動がSIRTに及ぼす影響を検討を通して、骨格筋におけるSIRTの生理学的意義を追究する。得られた結果は取りまとめ、適宜その成果は発表していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度経費が147円、次年度に繰り越しとなった。これは、経費支出に端数が生じたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成27年度)に繰り越しとなった額は極めて少額(147円)であり、次年度の研究計画ならびに支出計画を左右するものではないと考えている。
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