研究課題
『運動は寿命を延ばすのか?』という疑問に対して、未だに明確な回答は得られていない。運動刺激の種類や強度は多種多様であり、こうした刺激に応じて生体は効果の発現あるいは障害の発生などの適応を示す。つまり、運動刺激を受容し、その種類を認識し、最適な適応を示すシステムの存在が示唆されるが、その実態は不明である。本研究では長寿遺伝子サーチュイン(SIRT)に着目した。SIRTは、様々な細胞ストレスに対する防御機構を賦活化し、老化に伴う疾患を予防することで寿命延長に働くと考えられている。しかし、エネルギーを多量に消費すると共に、活性酸素などの種々の代謝産物を発生する運動と言う刺激に対するSIRTの応答は不明な点が多く残されている。そこで本研究では、運動に対する骨格筋可塑性応答におけるSIRTの役割を追究することを目的とする。本研究の目的を達成するために、3年計画で研究を遂行し、平成27年度はその2年目に当たる。本年度は、まず骨格筋細胞の分化モデルを用いて、SIRT1活性調節におけるAMPKの関与を追究した。マウス筋芽細胞由来C2C12細胞を用いて、筋管細胞への分化に及ぼすAMPKの影響を検討した。カフェイン刺激によるAMPKの活性化は、SIRT1タンパク発現に影響を与えなかったが、筋タンパク量ならびに筋管サイズを減少させた。さらに、哺乳類骨格筋細胞におけるストレス応答の転写因子である熱ショック転写因子1(HSF1)の欠損ならびに損傷骨格筋の再生に伴いSIRT1タンパク発現は増加した。以上の結果より、骨格筋に対するSIRT活性の制御にAMPKは関与しないこと、ストレス刺激はSIRT活性の調節において重要な役割を担っていることが示唆された。今後、さらに解析を進め、運動に対する骨格筋可塑性応答におけるSIRTの生理的役割を明らかにしていく計画である。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、運動に対する骨格筋可塑性応答におけるSIRTの役割を追究すると共に、「運動が寿命を延ばすのか」という命題についての回答を得ることを目的として3か年計画で実施される。2年目に当たる平成27年度は、培養骨格筋細胞を用いたSIRT活性調節におけるAMPKの役割ならびにストレス応答の役割を明らかにする計画であったが、その目的は概ね達成できている。したがって、おおむね順調に推移していると判断している。
3か年の研究計画の最終年に当たる平成28年度は、これまで2か年の研究成果を基にして、加齢マウスを用いて、加齢ならびに運動刺激がSIRT活性に及ぼす影響を検討ことで、骨格筋におけるSIRTの生理学的意義を追究する。得られた結果は取りまとめ、適宜その成果は発表していく計画である。
平成26年度経費が8,100円、次年度に繰り越しとなった。これは、経費支出に端数が生じたためである。
次年度(平成28年度)に繰り越しとなった額は少額(8,100円)であり、次年度の研究計画ならびに支出計画を左右するものではないと考えている。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 9件、 招待講演 2件)
American Journal of Physiology Endocrinology and Metabolism
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Acta Physiologica
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