研究課題
『運動は寿命を延ばすのか?』という疑問に対して、未だに明確な回答は得られていない。運動刺激の種類や強度は多種多様であり、こうした刺激に応じて生体は効果の発現あるいは障害の発生などの適応を示す。つまり、運動刺激を受容し、その種類を認識し、最適な適応を示すシステムの存在が示唆されるが、その実態は不明である。本研究では長寿遺伝子サーチュイン(SIRT)に着目した。SIRTは、様々な細胞ストレスに対する防御機構を賦活化し、老化に伴う疾患を予防することで寿命延長に働くと考えられている。しかし、エネルギーを多量に消費すると共に、活性酸素などの種々の代謝産物を発生する「運動」と言う刺激に対するSIRTの応答は不明な点が多く残されている。そこで本研究では、運動に対する骨格筋可塑性応答におけるSIRTの役割を追究することを目的とした。本研究の目的を達成するために3年計画で研究を遂行し、平成28年度はその最終年度の3年目に当たる。昨年度に引き続き、SIRT活性の制御におけるAMP活性化タンパクリン酸化酵素(AMPK)の関与について検討した。昨年までの結果より、AMPK活性の抑制は骨格筋を肥大させたことから、本年度はAMPK活性低下の影響を中心に追求した。その結果、AMPK活性の抑制は荷重除去による廃用性筋萎縮を軽減したが、SIRT1タンパクならびにPGC1aタンパクの発現には影響を与えなかった。また、荷重除去による廃用性萎縮自体もSIRT1タンパク発現に影響を与えなかった。一方、AMPK活性化は筋タンパク量を低下させたものの、SIRT1タンパク発現量に変化は認められなかった。以上の結果より、骨格筋の可塑性発現応答にはSIRT活性そのもの自身の関与は低いことが示唆された。
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