研究課題/領域番号 |
26350819
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
小笠原 準悦 杏林大学, 医学部, 助教 (20415110)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 褐色脂肪細胞化 / 骨格筋前駆細胞 / UCP-1 / PRDM16 / 急性水泳運動 |
研究実績の概要 |
myf-5を発現する骨格筋前駆細胞は,PRDM16の転写調節作用を介して褐色脂肪細胞へと分化することがほぼ断定された.褐色脂肪細胞は熱産生を介したエネルギ-消費能を有することから,本機能を介した抗肥満療法の確立が期待されている.我々はすでに,急性水泳運動により一部の骨格筋において褐色脂肪細胞化のシグナルが誘導されることを観察している.本研究では,身体運動が誘導する骨格筋前駆細胞の褐色脂肪細胞化について,トリガーとなる分子の検索をふまえメカニズムの解明に挑む. 初年度は,パイロットスタディーの再現性を確認することを中心に,急性水泳運動による肩甲骨周囲骨格筋群の褐色脂肪細胞化シグナルについて検討した.先の検討と同様に,褐色脂肪細胞マーカーであるUCP-1,Zic-1,PRDM16,PPARγ/C/EBP-β複合体の発現は,非運動群と比べて急性運動群の肩甲骨周囲骨格筋群において発現が顕著に増加することを再確認した.DNAアレイ解析による検討において,急性運動群はMfsd2a (major facilitator super family domain containing 2a)の発現を顕著に増加させることを見出し,タンパク質レベルにおいても同様の変化が生じることを見出している.加えて,Col10a1分子の顕著な増加も観察されたことから,こうした一連の分子が,急性運動による肩甲骨周囲骨格筋群の褐色脂肪細胞化シグナルの賦活化を修飾する可能性が示唆された.次年度以降は,血中で変化する液性因子とこれら分子との関係に焦点を当て,引き続き検討を進める計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在,血中因子の網羅的検索を目的に検討を進めているが,DNAアレイにより予想をはるかに超越した分子の変化が観察されたことも踏まえ,ターゲット分子の決定に時間を要している段階にある.加えて,免疫組織化学染色による可視化に関しても,当初の計画と比較してデータの取得が若干遅れている.フローサイトメトリによる骨格筋部位依存的な筋前駆細胞や衛生細胞の局在の検討に対しても,当初の計画と比較してデータの取得が若干遅れている状況にある.そのため,次年度はin vivoの解析と並行してin vitroの検討を推進することを計画している.
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載の計画に対する大幅な軌道修正を行わず,当初の計画通りに研究を進める予定である.具体的には,Mfsd2a分子とPRDM16分子との相互作用や,これら分子の発現を調節する液性因子の検索を通じて,急性運動による褐色脂肪細胞化について検討を進めて行く予定である.加えて,継続的な水泳運動トレーニングを行った個体を作成し,急性運動の変化と対峙させることによって,「運動」により生じる褐色脂肪細胞化のメカニズムの一端を多角的に検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の会計処理に伴い、備品の購入を一時凍結したことにより次年度使用額が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額についてはすでに実験試薬等の購入を済ませており、平成27年度は交付申請書の計画に沿った使用を予定している。
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