研究課題
myf-5陽性の骨格筋前駆細胞は,褐色脂肪細胞へと分化する.myf-5はMyoDファミリーに属するが,同属するmyogeninは筋管細胞から骨格筋への分化を促し,myf-5は骨格筋前駆細胞から筋管細胞の形成を促す.実際,レジスタンス運動や持久的運動によってmyf-5 mRNAの発現やmyogeninの機能が変化することから,身体運動は骨格筋前駆細胞の分化機構への修飾能を有するものと推察される.上記の仮説を肯定する結果として,初年度は,急性の水泳運動によりマウス肩甲周囲骨格筋において褐色脂肪細胞化のシグナルが活性化することを観察している.注目すべき点は,DNAアレイ解析やRT-PCR法,ウエスタンブロッティング法によって,mfsd2a(major facilitator super family domain containing 2a)分子が一連の変化に寄与する可能性が推察されたことである.そこで,平成27年度は,mfsd2aの変化に関与する液性因子の同定に尽力したところ,約20個まで候補の液性因子を絞りこんでいる.加えて,急性の水泳運動が肩甲周囲骨格筋のみに褐色脂肪細胞化を観察した結果は,他の骨格筋部位とは対照的に当該部位にmyf-5陽性前駆細胞が集積しているために生じる可能性についても免疫組織化学染色によって表現するに至っている.こうした一連の結果は,発生の段階でマウスの生体を構成する骨格筋の前駆細胞が一様に生体各部位へと分配されるわけではないことを示しているとともに,肩甲周囲骨格筋に多く存在するmyf-5陽性骨格筋前駆細胞は,少なくとも,一部,mfsd2a分子の変化を介して褐色脂肪細胞化へと舵を切ることができることを示唆している.最終年度は,こうした変化を調節する液性因子との相互作用について明確にしていきたいと考えている.
3: やや遅れている
平成27年度は,急性の水泳運動により血中で変化する液性因子の網羅的検索を軸に液性因子の同定を図りin vitroの系へ応用する予定であった.昨年度に比べてターゲット因子を絞り込むことができている状況ではあるが,目的とした液性因子のリコンビナントタンパク質の作成に時間を要している.一方,免疫組織化学染色によるmyf-5陽性の骨格筋前駆細胞の局在の検討に関しては,十分なデータを取得するに至っている.加えて,フローサイトメトリを用いた骨格筋各部位に依存的な前駆細胞の単離同定に関しては,現在,方法論の確立を含めて積極的に検討している.全体的にみて,液性因子の同定に時間を要した感があり,進捗状況はやや遅れていると判断する.
申請書に記載の計画に従って研究を進めていく予定である.方向性としては,in vivoの検討により得られた変化を,in vitroの系に応用することによって調節メカニズムの検討へと発展させる計画である.具体的には,Mfsd2aを過剰発現させた株化細胞株を樹立し,そこへターゲットとした液性因子を混合した細胞培養系を構築することによって,身体運動がmyf-5陽性骨格筋前駆細胞の褐色脂肪細胞化へ導く分子メカニズムについて検討することを計画している.
年度末の会計処理に伴い,物品の購入を一時凍結したことにより次年度使用額が生じたものである.
次年度使用額についてはすでに実験試薬などの購入を済ませており,平成28年度は交付申請書の計画に従った使用を予定している.
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
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